- 時制の一致
- 関係代名詞
- 前置詞の使い分け
これらの単元は、特に多くの生徒が苦手意識を持つポイントです。予習の際には、「なぜここでつまずくのか」という原因分析まで踏み込んでおくと、より効果的な指導が可能になります。
似ている単語や文法の「違い」を明確にする
例えば、「see」「look」「watch」の違いや、「for」「during」「while」の使い分けなど、似ていて混同しやすい単語や文法項目は、予習の段階でその違いを明確に言語化しておきましょう。「生徒に質問されたら、こう答えよう」というシミュレーションをしておくのです。
コアイメージ(単語が持つ中心的な意味合い)を掴んでおくと、丸暗記ではない、応用力のつく説明ができます。この準備が、生徒の「なるほど!」という納得感を引き出します。
例文を音読してリズムを身体に染み込ませる
テキストに載っている重要例文は、予習の際に必ず声に出して読んでみてください。黙読するだけでは気づかない、英語特有のリズムやイントネーション、単語の繋がり(リエゾン)などを体感することができます。
授業中に、あなたが良い発音とリズムで例文を読んであげれば、生徒も自然とそれを真似するようになり、リスニング力やスピーキング力の向上にも繋がります。予習段階での数回の音読が、授業全体の臨場感を大きく変えるのです。
国語・社会・理科:重要語句と話の「流れ」を掴む
国語、社会、理科といった科目は、知識が点在しがちです。予習の目的は、それらの知識を線で結び、大きな「流れ」や「全体像」として捉えることです。
個々の重要語句を覚えるだけでなく、それらがどのようにつながっているのかを意識しましょう。
登場人物や出来事の相関図を書いてみる
歴史であれば登場人物、古典であれば登場人物、理科であれば物質の変化など、テキストを読みながら簡単な相関図やフローチャートを書いてみるのがおすすめです。例えば、関ヶ原の戦いを予習するなら、徳川家康と石田三成を中心に、誰がどちらの味方で、誰が裏切ったのかを矢印で結んでみる。
こうすることで、複雑な人間関係や出来事の因果関係が視覚的に整理され、記憶に定着しやすくなります。この自作の図は、授業での板書の際にも大いに役立ちます。
「なぜ?」と「その結果どうなった?」を自問自答する
テキストを読んでいるとき、常に「なぜこの出来事が起こったのか?」「その結果、社会はどう変わったのか?」と自問自答する癖をつけましょう。例えば、産業革命を教えるなら、「なぜイギリスで始まったのか?」「産業革命の結果、人々の暮らしはどう変わったのか?」を考えることです。
この「なぜ?」と「結果」のつながりを意識することで、単なる暗記科目から、物語として面白い授業へと進化させることができます。生徒の知的好奇心を刺激する授業の鍵は、この自問自答にあるんです。
どうしても予習時間が取れない時の最終手段とQ&A
どんなに効率化を図っても、急な予定が入ったり、体調が悪かったりと、どうしても予習時間が十分に取れない日はありますよね。そんな絶体絶命のピンチを乗り切るための「最終手段」と、多くの塾講師が抱える予習に関する疑問にお答えします。
これを読んでおけば、いざという時も冷静に対処できるはずです。
最低限これだけ!5分でできる最終チェックリスト
授業開始まであと5分!そんな極限状態で、パニックにならずに最低限の準備を整えるためのチェックリストです。全部やろうとせず、これだけは確認するというポイントを絞りましょう。
5分でできる最終チェック
- 今日の範囲の確認
- 解答に目を通す
- 一番の山場を把握
- 最初の5分の流れ
この4点を確認するだけで、授業の破綻は防げます。まず、教える範囲を間違えないこと。
次に、答えがわからずフリーズする事態を避けること。そして、授業の核となる部分と、導入をどう乗り切るかを決める。
これだけで、精神的な余裕が全く違ってきます。
生徒を巻き込む!「一緒に考える」授業で乗り切る方法
予習不足の時こそ、講師が一方的に教えるスタイルから、生徒と一緒に考える「ファシリテーター」へと役割を変えるチャンスです。この発想の転換が、ピンチを質の高い授業に変えることがあります。
「先生も悩むこの問題、どう解く?」と問いかける
難しい問題に直面した時、知ったかぶりをするのが一番よくありません。正直に「この問題、すごく難しいよね。
先生も一瞬悩んだんだけど、どういうアプローチがいいと思う?」と生徒に問いかけてみましょう。すると、生徒は「先生を助けてあげよう」「自分も考えてみよう」と主体的に問題に取り組み始めます。
複数の意見が出てきたら、それぞれの解法を試してみるのも面白いです。講師が完璧でない姿を見せることで、かえって生徒との距離が縮まることもあります。
ペアワークやグループワークを多めに取り入れる
予習が不十分な時は、自分が話す時間を減らし、生徒が活動する時間を増やすのが得策です。例えば、演習問題をペアで教え合いさせたり、グループで解法を議論させたりする時間を設けましょう。
生徒同士で教え合うことで、理解が深まるという教育的効果も期待できます。その間、講師は机間巡視をしながら生徒の理解度をチェックし、次の解説のポイントを絞り込む時間に充てることができます。
まさに一石二鳥の方法です。
「塾講師の予習」に関するよくある質問
最後に、多くの塾講師から寄せられる予習に関する素朴な疑問に、Q&A形式でお答えします。きっと、あなたの悩みもこの中にあるはずです。
Q1. 担当科目が多すぎて、予習が追いつきません…
A. わかります、その気持ち。複数科目を担当していると本当に大変ですよね。
この場合は、予習に優先順位をつけることが成功の鍵です。例えば、「自分の苦手な科目>生徒の苦手な単元>新しい単元>復習単元」のように、自分の中でルールを決めましょう。
すべての科目を100%の力で予習するのは不可能です。力を入れるべき科目・単元を見極め、それ以外は今回紹介した時短術を駆使して効率的に乗り切る。
このメリハリが大切です。
Q2. 予習した内容を、授業中に忘れてしまいます…
A. これは「あるある」ですよね。しっかり準備したのに、いざ授業が始まると頭が真っ白に…。
これを防ぐには、予習の最後に「キーワードメモ」を作成するのがおすすめです。授業で話す要点や解説のポイントを、付箋や小さなメモ帳に単語レベルで5〜6個書き出しておき、教卓に置いておくだけです。
文章で書くと読むのに時間がかかりますが、キーワードならチラッと見るだけで話す内容を思い出せます。「解の公式の証明」「判別式」「グラフの共有点」といったメモがあるだけで、心の安定剤になりますよ。
Q3. 予習しないベテラン講師がいますが、真似してもいいですか?
A. そのベテラン講師は、一見予習していないように見えて、実は頭の中で瞬時に予習を終えている可能性が高いです。長年の経験の蓄積により、テキストを見た瞬間に「今日のポイントはここだな」「生徒はここでつまずくな」と判断できるのです。
これは新人や若手講師がすぐに真似できるものではありません。彼らの「効率の良さ」は見習うべきですが、形だけ真似て予習を完全にゼロにするのは危険です。
まずはこの記事で紹介した時短術で「賢く予習する」スキルを身につけることから始めましょう。
- 授業後のメモ
- 生徒からの質問
- オリジナルプリント
これらの記録を整理・保管しておくことで、来年同じ単元を教える際に、ゼロから準備する必要がなくなります。「去年の自分、ありがとう!」と思える瞬間が必ず来ますよ。
授業後の「3分間メモ」を習慣にする
授業が終わったら、記憶が新しいうちに3分だけ時間を取って、その日の授業についてメモを残す習慣をつけましょう。書く内容は「生徒の反応が良かった説明」「ウケた雑談」「質問が多く出た箇所」「時間配分の反省点」など、何でも構いません。
この小さなメモの蓄積が、翌年以降の予習で絶大な効果を発揮します。テキストの余白に書き込むだけでもOK。
この3分間の投資が、未来の数時間を節約してくれるんです。
自作プリントや教材はデータで保存する
授業で使ったオリジナルの補助プリントや小テストなどは、必ずデータで保存しておきましょう。ファイル名に「【中2英語】不定詞_確認テスト」のように、学年・科目・単元がわかるようにしておくと、後から検索しやすくなります。
クラウドストレージ(Google DriveやDropboxなど)に保存しておけば、いつでもどこでもアクセスできて便利です。一度作った教材は、少し手直しするだけで何度も使えます。
毎回作り直す手間を省き、より質の高い教材へとブラッシュアップしていくことが可能になります。
【科目別】予習の質をさらに高める応用テクニック

基本的な時短術をマスターしたら、次はもう一歩進んで、予習の「質」を高めてみましょう。科目ごとに、押さえるべきポイントは少しずつ異なります。
ここでは、主要科目別に、より効果的な予習を行うための応用テクニックを紹介します。これを実践すれば、あなたの授業はさらに分かりやすく、深みのあるものになるはずです。
数学・算数:解法の暗記ではなく「なぜそうなるか」を言語化する
数学や算数の予習で陥りがちなのが、解法パターンの暗記です。しかし、それでは応用問題に対応できませんし、生徒の「なぜ?」に答えることもできません。
大切なのは、公式や解法の裏にある「理屈」を自分の言葉で説明できるようにしておくことです。
公式の成り立ちを自分の言葉で説明してみる
例えば、「解の公式」を予習する際、ただ公式を覚えて問題を解くだけでなく、「この公式がどのようにして導き出されるのか(平方完成のプロセス)」を一度自分で再現し、説明する練習をしてみましょう。「なぜ2aで割るのか」「なぜルートの中がb²-4acになるのか」を自分の言葉で語れるようになると、生徒への説明に説得力が生まれます。
この「なぜ」を言語化するプロセスが、表面的な理解から本質的な理解へと予習のレベルを引き上げてくれます。
図やグラフをフリーハンドで描く練習をする
関数や図形の問題では、図やグラフを正確に描けるかどうかが理解の鍵を握ります。予習の段階で、テキストに載っている図をただ眺めるだけでなく、一度自分でフリーハンドで描いてみることをおすすめします。
実際に描いてみることで、「補助線はどこに引くのが効果的か」「グラフのどの部分が重要か」といったポイントが体感的に理解できます。授業中に、生徒の前でスラスラと分かりやすい図を描ける先生は、それだけで生徒からの尊敬を集めることができますよ。
英語:文法・単語のつまずきポイントを先回りして押さえる
英語の授業では、生徒がどこでつまずきやすいかを予測し、先回りしてフォローすることが質の高い授業に繋がります。特に、日本語と英語の構造の違いから生じる混乱は、重点的にケアしてあげる必要があります。
英語のつまずきポイント
- 時制の一致
- 関係代名詞
- 前置詞の使い分け
これらの単元は、特に多くの生徒が苦手意識を持つポイントです。予習の際には、「なぜここでつまずくのか」という原因分析まで踏み込んでおくと、より効果的な指導が可能になります。
似ている単語や文法の「違い」を明確にする
例えば、「see」「look」「watch」の違いや、「for」「during」「while」の使い分けなど、似ていて混同しやすい単語や文法項目は、予習の段階でその違いを明確に言語化しておきましょう。「生徒に質問されたら、こう答えよう」というシミュレーションをしておくのです。
コアイメージ(単語が持つ中心的な意味合い)を掴んでおくと、丸暗記ではない、応用力のつく説明ができます。この準備が、生徒の「なるほど!」という納得感を引き出します。
例文を音読してリズムを身体に染み込ませる
テキストに載っている重要例文は、予習の際に必ず声に出して読んでみてください。黙読するだけでは気づかない、英語特有のリズムやイントネーション、単語の繋がり(リエゾン)などを体感することができます。
授業中に、あなたが良い発音とリズムで例文を読んであげれば、生徒も自然とそれを真似するようになり、リスニング力やスピーキング力の向上にも繋がります。予習段階での数回の音読が、授業全体の臨場感を大きく変えるのです。
国語・社会・理科:重要語句と話の「流れ」を掴む
国語、社会、理科といった科目は、知識が点在しがちです。予習の目的は、それらの知識を線で結び、大きな「流れ」や「全体像」として捉えることです。
個々の重要語句を覚えるだけでなく、それらがどのようにつながっているのかを意識しましょう。
登場人物や出来事の相関図を書いてみる
歴史であれば登場人物、古典であれば登場人物、理科であれば物質の変化など、テキストを読みながら簡単な相関図やフローチャートを書いてみるのがおすすめです。例えば、関ヶ原の戦いを予習するなら、徳川家康と石田三成を中心に、誰がどちらの味方で、誰が裏切ったのかを矢印で結んでみる。
こうすることで、複雑な人間関係や出来事の因果関係が視覚的に整理され、記憶に定着しやすくなります。この自作の図は、授業での板書の際にも大いに役立ちます。
「なぜ?」と「その結果どうなった?」を自問自答する
テキストを読んでいるとき、常に「なぜこの出来事が起こったのか?」「その結果、社会はどう変わったのか?」と自問自答する癖をつけましょう。例えば、産業革命を教えるなら、「なぜイギリスで始まったのか?」「産業革命の結果、人々の暮らしはどう変わったのか?」を考えることです。
この「なぜ?」と「結果」のつながりを意識することで、単なる暗記科目から、物語として面白い授業へと進化させることができます。生徒の知的好奇心を刺激する授業の鍵は、この自問自答にあるんです。
どうしても予習時間が取れない時の最終手段とQ&A
どんなに効率化を図っても、急な予定が入ったり、体調が悪かったりと、どうしても予習時間が十分に取れない日はありますよね。そんな絶体絶命のピンチを乗り切るための「最終手段」と、多くの塾講師が抱える予習に関する疑問にお答えします。
これを読んでおけば、いざという時も冷静に対処できるはずです。
最低限これだけ!5分でできる最終チェックリスト
授業開始まであと5分!そんな極限状態で、パニックにならずに最低限の準備を整えるためのチェックリストです。全部やろうとせず、これだけは確認するというポイントを絞りましょう。
5分でできる最終チェック
- 今日の範囲の確認
- 解答に目を通す
- 一番の山場を把握
- 最初の5分の流れ
この4点を確認するだけで、授業の破綻は防げます。まず、教える範囲を間違えないこと。
次に、答えがわからずフリーズする事態を避けること。そして、授業の核となる部分と、導入をどう乗り切るかを決める。
これだけで、精神的な余裕が全く違ってきます。
生徒を巻き込む!「一緒に考える」授業で乗り切る方法
予習不足の時こそ、講師が一方的に教えるスタイルから、生徒と一緒に考える「ファシリテーター」へと役割を変えるチャンスです。この発想の転換が、ピンチを質の高い授業に変えることがあります。
「先生も悩むこの問題、どう解く?」と問いかける
難しい問題に直面した時、知ったかぶりをするのが一番よくありません。正直に「この問題、すごく難しいよね。
先生も一瞬悩んだんだけど、どういうアプローチがいいと思う?」と生徒に問いかけてみましょう。すると、生徒は「先生を助けてあげよう」「自分も考えてみよう」と主体的に問題に取り組み始めます。
複数の意見が出てきたら、それぞれの解法を試してみるのも面白いです。講師が完璧でない姿を見せることで、かえって生徒との距離が縮まることもあります。
ペアワークやグループワークを多めに取り入れる
予習が不十分な時は、自分が話す時間を減らし、生徒が活動する時間を増やすのが得策です。例えば、演習問題をペアで教え合いさせたり、グループで解法を議論させたりする時間を設けましょう。
生徒同士で教え合うことで、理解が深まるという教育的効果も期待できます。その間、講師は机間巡視をしながら生徒の理解度をチェックし、次の解説のポイントを絞り込む時間に充てることができます。
まさに一石二鳥の方法です。
「塾講師の予習」に関するよくある質問
最後に、多くの塾講師から寄せられる予習に関する素朴な疑問に、Q&A形式でお答えします。きっと、あなたの悩みもこの中にあるはずです。
Q1. 担当科目が多すぎて、予習が追いつきません…
A. わかります、その気持ち。複数科目を担当していると本当に大変ですよね。
この場合は、予習に優先順位をつけることが成功の鍵です。例えば、「自分の苦手な科目>生徒の苦手な単元>新しい単元>復習単元」のように、自分の中でルールを決めましょう。
すべての科目を100%の力で予習するのは不可能です。力を入れるべき科目・単元を見極め、それ以外は今回紹介した時短術を駆使して効率的に乗り切る。
このメリハリが大切です。
Q2. 予習した内容を、授業中に忘れてしまいます…
A. これは「あるある」ですよね。しっかり準備したのに、いざ授業が始まると頭が真っ白に…。
これを防ぐには、予習の最後に「キーワードメモ」を作成するのがおすすめです。授業で話す要点や解説のポイントを、付箋や小さなメモ帳に単語レベルで5〜6個書き出しておき、教卓に置いておくだけです。
文章で書くと読むのに時間がかかりますが、キーワードならチラッと見るだけで話す内容を思い出せます。「解の公式の証明」「判別式」「グラフの共有点」といったメモがあるだけで、心の安定剤になりますよ。
Q3. 予習しないベテラン講師がいますが、真似してもいいですか?
A. そのベテラン講師は、一見予習していないように見えて、実は頭の中で瞬時に予習を終えている可能性が高いです。長年の経験の蓄積により、テキストを見た瞬間に「今日のポイントはここだな」「生徒はここでつまずくな」と判断できるのです。
これは新人や若手講師がすぐに真似できるものではありません。彼らの「効率の良さ」は見習うべきですが、形だけ真似て予習を完全にゼロにするのは危険です。
まずはこの記事で紹介した時短術で「賢く予習する」スキルを身につけることから始めましょう。
- 導入(5分)
- 要点解説(15分)
- 演習・解説(25分)
- まとめ(5分)
これはあくまで一例です。自分の指導スタイルに合わせて、各パートの時間配分や内容を調整し、「マイテンプレート」を完成させましょう。
一度型ができてしまえば、予習では各パートに何を当てはめるかを考えるだけで済むようになります。
導入の雑談ネタをストックしておく
授業の冒頭5分、いわゆる「アイスブレイク」は生徒の心を掴むために非常に大切です。しかし、毎回面白い雑談を考えるのは大変ですよね。
そこでおすすめなのが、雑談ネタのストックです。学習内容に関連する豆知識(数学者の面白いエピソードなど)、最近のニュース、学校生活に関する質問など、いつでも使えるネタをいくつか用意しておきましょう。
スマホのメモ帳などにリストアップしておくだけで、「今日は何を話そう…」と悩む時間がなくなり、スムーズに授業に入れます。
板書計画は「キーワード」だけメモする
丁寧に板書計画をノートに書いている真面目な先生ほど、予習時間が長くなる傾向があります。板書計画は、一言一句すべて書き出す必要はありません。
「今日の授業で絶対に伝えたいキーワード」や「書いておきたい公式・例文」などを5〜6個、箇条書きでメモしておく程度で十分です。あとは、授業の流れの中で、そのキーワードを使いながら肉付けしていけばいいのです。
これにより、板書計画にかかる時間を1/5以下に削減できます。
【時短術4】スキマ時間をフル活用する「分割予習」のススメ
「まとまった予習時間が取れない」というのは、多くの講師の悩みです。それなら、発想を変えてみませんか?まとまった時間がないなら、短い時間を組み合わせればいいんです。
「分割予習」を習慣にすれば、机に向かう時間はゼロでも、質の高い準備が可能になります。
通勤電車では「解答解説の黙読」
通勤中の電車やバスの中は、絶好の予習時間です。ここでやるべきなのは、担当する範囲の「解答解説を読む」こと。
問題を解く必要はありません。解説を読みながら、「なるほど、ここはこう説明すればいいのか」「この問題はひっかけだな」と頭の中でシミュレーションするだけです。
スマホでテキストのPDFを見ておくだけでも効果は絶大。この10分間のインプットがあるだけで、後で机に向かって本格的に準備する際の時間が劇的に短縮されます。
休憩中の5分で「問題1問だけ解く」
授業の合間の休憩時間や昼休み、たった5分あれば、予習は進められます。この時間でやるのは「今日の授業で一番の山場となる問題を1問だけ解いてみる」ことです。
実際に自分で手を動かして解いてみることで、生徒がどこでつまずきそうか、計算ミスをしそうかといった具体的なポイントが見えてきます。たった1問ですが、この経験が授業での解説の深みを大きく変えます。
「5分で1問」を合言葉に、スキマ時間を有効活用しましょう。
【時短術5】過去の指導記録や教材を「資産」として再利用する
一度行った授業は、決して使い捨てではありません。過去の指導記録や使用した教材は、未来の自分を助けてくれる貴重な「資産」です。
この資産をうまく活用することで、予習の手間を大幅に省くことができます。
資産化できる指導記録
- 授業後のメモ
- 生徒からの質問
- オリジナルプリント
これらの記録を整理・保管しておくことで、来年同じ単元を教える際に、ゼロから準備する必要がなくなります。「去年の自分、ありがとう!」と思える瞬間が必ず来ますよ。
授業後の「3分間メモ」を習慣にする
授業が終わったら、記憶が新しいうちに3分だけ時間を取って、その日の授業についてメモを残す習慣をつけましょう。書く内容は「生徒の反応が良かった説明」「ウケた雑談」「質問が多く出た箇所」「時間配分の反省点」など、何でも構いません。
この小さなメモの蓄積が、翌年以降の予習で絶大な効果を発揮します。テキストの余白に書き込むだけでもOK。
この3分間の投資が、未来の数時間を節約してくれるんです。
自作プリントや教材はデータで保存する
授業で使ったオリジナルの補助プリントや小テストなどは、必ずデータで保存しておきましょう。ファイル名に「【中2英語】不定詞_確認テスト」のように、学年・科目・単元がわかるようにしておくと、後から検索しやすくなります。
クラウドストレージ(Google DriveやDropboxなど)に保存しておけば、いつでもどこでもアクセスできて便利です。一度作った教材は、少し手直しするだけで何度も使えます。
毎回作り直す手間を省き、より質の高い教材へとブラッシュアップしていくことが可能になります。
【科目別】予習の質をさらに高める応用テクニック

基本的な時短術をマスターしたら、次はもう一歩進んで、予習の「質」を高めてみましょう。科目ごとに、押さえるべきポイントは少しずつ異なります。
ここでは、主要科目別に、より効果的な予習を行うための応用テクニックを紹介します。これを実践すれば、あなたの授業はさらに分かりやすく、深みのあるものになるはずです。
数学・算数:解法の暗記ではなく「なぜそうなるか」を言語化する
数学や算数の予習で陥りがちなのが、解法パターンの暗記です。しかし、それでは応用問題に対応できませんし、生徒の「なぜ?」に答えることもできません。
大切なのは、公式や解法の裏にある「理屈」を自分の言葉で説明できるようにしておくことです。
公式の成り立ちを自分の言葉で説明してみる
例えば、「解の公式」を予習する際、ただ公式を覚えて問題を解くだけでなく、「この公式がどのようにして導き出されるのか(平方完成のプロセス)」を一度自分で再現し、説明する練習をしてみましょう。「なぜ2aで割るのか」「なぜルートの中がb²-4acになるのか」を自分の言葉で語れるようになると、生徒への説明に説得力が生まれます。
この「なぜ」を言語化するプロセスが、表面的な理解から本質的な理解へと予習のレベルを引き上げてくれます。
図やグラフをフリーハンドで描く練習をする
関数や図形の問題では、図やグラフを正確に描けるかどうかが理解の鍵を握ります。予習の段階で、テキストに載っている図をただ眺めるだけでなく、一度自分でフリーハンドで描いてみることをおすすめします。
実際に描いてみることで、「補助線はどこに引くのが効果的か」「グラフのどの部分が重要か」といったポイントが体感的に理解できます。授業中に、生徒の前でスラスラと分かりやすい図を描ける先生は、それだけで生徒からの尊敬を集めることができますよ。
英語:文法・単語のつまずきポイントを先回りして押さえる
英語の授業では、生徒がどこでつまずきやすいかを予測し、先回りしてフォローすることが質の高い授業に繋がります。特に、日本語と英語の構造の違いから生じる混乱は、重点的にケアしてあげる必要があります。
英語のつまずきポイント
- 時制の一致
- 関係代名詞
- 前置詞の使い分け
これらの単元は、特に多くの生徒が苦手意識を持つポイントです。予習の際には、「なぜここでつまずくのか」という原因分析まで踏み込んでおくと、より効果的な指導が可能になります。
似ている単語や文法の「違い」を明確にする
例えば、「see」「look」「watch」の違いや、「for」「during」「while」の使い分けなど、似ていて混同しやすい単語や文法項目は、予習の段階でその違いを明確に言語化しておきましょう。「生徒に質問されたら、こう答えよう」というシミュレーションをしておくのです。
コアイメージ(単語が持つ中心的な意味合い)を掴んでおくと、丸暗記ではない、応用力のつく説明ができます。この準備が、生徒の「なるほど!」という納得感を引き出します。
例文を音読してリズムを身体に染み込ませる
テキストに載っている重要例文は、予習の際に必ず声に出して読んでみてください。黙読するだけでは気づかない、英語特有のリズムやイントネーション、単語の繋がり(リエゾン)などを体感することができます。
授業中に、あなたが良い発音とリズムで例文を読んであげれば、生徒も自然とそれを真似するようになり、リスニング力やスピーキング力の向上にも繋がります。予習段階での数回の音読が、授業全体の臨場感を大きく変えるのです。
国語・社会・理科:重要語句と話の「流れ」を掴む
国語、社会、理科といった科目は、知識が点在しがちです。予習の目的は、それらの知識を線で結び、大きな「流れ」や「全体像」として捉えることです。
個々の重要語句を覚えるだけでなく、それらがどのようにつながっているのかを意識しましょう。
登場人物や出来事の相関図を書いてみる
歴史であれば登場人物、古典であれば登場人物、理科であれば物質の変化など、テキストを読みながら簡単な相関図やフローチャートを書いてみるのがおすすめです。例えば、関ヶ原の戦いを予習するなら、徳川家康と石田三成を中心に、誰がどちらの味方で、誰が裏切ったのかを矢印で結んでみる。
こうすることで、複雑な人間関係や出来事の因果関係が視覚的に整理され、記憶に定着しやすくなります。この自作の図は、授業での板書の際にも大いに役立ちます。
「なぜ?」と「その結果どうなった?」を自問自答する
テキストを読んでいるとき、常に「なぜこの出来事が起こったのか?」「その結果、社会はどう変わったのか?」と自問自答する癖をつけましょう。例えば、産業革命を教えるなら、「なぜイギリスで始まったのか?」「産業革命の結果、人々の暮らしはどう変わったのか?」を考えることです。
この「なぜ?」と「結果」のつながりを意識することで、単なる暗記科目から、物語として面白い授業へと進化させることができます。生徒の知的好奇心を刺激する授業の鍵は、この自問自答にあるんです。
どうしても予習時間が取れない時の最終手段とQ&A
どんなに効率化を図っても、急な予定が入ったり、体調が悪かったりと、どうしても予習時間が十分に取れない日はありますよね。そんな絶体絶命のピンチを乗り切るための「最終手段」と、多くの塾講師が抱える予習に関する疑問にお答えします。
これを読んでおけば、いざという時も冷静に対処できるはずです。
最低限これだけ!5分でできる最終チェックリスト
授業開始まであと5分!そんな極限状態で、パニックにならずに最低限の準備を整えるためのチェックリストです。全部やろうとせず、これだけは確認するというポイントを絞りましょう。
5分でできる最終チェック
- 今日の範囲の確認
- 解答に目を通す
- 一番の山場を把握
- 最初の5分の流れ
この4点を確認するだけで、授業の破綻は防げます。まず、教える範囲を間違えないこと。
次に、答えがわからずフリーズする事態を避けること。そして、授業の核となる部分と、導入をどう乗り切るかを決める。
これだけで、精神的な余裕が全く違ってきます。
生徒を巻き込む!「一緒に考える」授業で乗り切る方法
予習不足の時こそ、講師が一方的に教えるスタイルから、生徒と一緒に考える「ファシリテーター」へと役割を変えるチャンスです。この発想の転換が、ピンチを質の高い授業に変えることがあります。
「先生も悩むこの問題、どう解く?」と問いかける
難しい問題に直面した時、知ったかぶりをするのが一番よくありません。正直に「この問題、すごく難しいよね。
先生も一瞬悩んだんだけど、どういうアプローチがいいと思う?」と生徒に問いかけてみましょう。すると、生徒は「先生を助けてあげよう」「自分も考えてみよう」と主体的に問題に取り組み始めます。
複数の意見が出てきたら、それぞれの解法を試してみるのも面白いです。講師が完璧でない姿を見せることで、かえって生徒との距離が縮まることもあります。
ペアワークやグループワークを多めに取り入れる
予習が不十分な時は、自分が話す時間を減らし、生徒が活動する時間を増やすのが得策です。例えば、演習問題をペアで教え合いさせたり、グループで解法を議論させたりする時間を設けましょう。
生徒同士で教え合うことで、理解が深まるという教育的効果も期待できます。その間、講師は机間巡視をしながら生徒の理解度をチェックし、次の解説のポイントを絞り込む時間に充てることができます。
まさに一石二鳥の方法です。
「塾講師の予習」に関するよくある質問
最後に、多くの塾講師から寄せられる予習に関する素朴な疑問に、Q&A形式でお答えします。きっと、あなたの悩みもこの中にあるはずです。
Q1. 担当科目が多すぎて、予習が追いつきません…
A. わかります、その気持ち。複数科目を担当していると本当に大変ですよね。
この場合は、予習に優先順位をつけることが成功の鍵です。例えば、「自分の苦手な科目>生徒の苦手な単元>新しい単元>復習単元」のように、自分の中でルールを決めましょう。
すべての科目を100%の力で予習するのは不可能です。力を入れるべき科目・単元を見極め、それ以外は今回紹介した時短術を駆使して効率的に乗り切る。
このメリハリが大切です。
Q2. 予習した内容を、授業中に忘れてしまいます…
A. これは「あるある」ですよね。しっかり準備したのに、いざ授業が始まると頭が真っ白に…。
これを防ぐには、予習の最後に「キーワードメモ」を作成するのがおすすめです。授業で話す要点や解説のポイントを、付箋や小さなメモ帳に単語レベルで5〜6個書き出しておき、教卓に置いておくだけです。
文章で書くと読むのに時間がかかりますが、キーワードならチラッと見るだけで話す内容を思い出せます。「解の公式の証明」「判別式」「グラフの共有点」といったメモがあるだけで、心の安定剤になりますよ。
Q3. 予習しないベテラン講師がいますが、真似してもいいですか?
A. そのベテラン講師は、一見予習していないように見えて、実は頭の中で瞬時に予習を終えている可能性が高いです。長年の経験の蓄積により、テキストを見た瞬間に「今日のポイントはここだな」「生徒はここでつまずくな」と判断できるのです。
これは新人や若手講師がすぐに真似できるものではありません。彼らの「効率の良さ」は見習うべきですが、形だけ真似て予習を完全にゼロにするのは危険です。
まずはこの記事で紹介した時短術で「賢く予習する」スキルを身につけることから始めましょう。
- 今日の授業のゴール
- 生徒のつまずき予測
この2点さえ押さえれば、授業の根幹は揺らぎません。テキストの隅から隅まで目を通す必要はないんです。
「何を教えるか」と「どこで生徒が迷うか」を明確にすること。これが時短の第一歩です。
授業のゴールを1つだけ決める
予習を始める前に、まず「今日の授業が終わった時、生徒にどんな状態になっていてほしいか」を一つだけ決めてください。例えば、「二次関数の頂点の求め方をマスターしている」「関係代名詞のthatとwhichを使い分けられる」といった具体的なものです。
このゴールが明確になれば、そこから逆算して「何を重点的に解説すべきか」「どの演習問題に時間をかけるべきか」が自然と見えてきます。あれもこれもと欲張らず、ゴールを一つに絞ることが、予習の焦点を定め、無駄をなくすコツです。
生徒が「?」となりそうな箇所を3つ予測する
次に、生徒の立場になってテキストを読み、「ここ、多分わからないだろうな」「この表現は誤解しそうだな」という箇所を3つだけ予測してピックアップします。過去の生徒からの質問を思い出したり、自分が学生時代に苦手だった部分を振り返ったりするのが効果的です。
この「疑問点予測」ができていれば、授業中に生徒が固まってしまっても、先回りして「ここは難しいよね。実はこう考えると分かりやすいよ」とフォローできます。
この準備が、生徒からの「先生、すごい!」という信頼に繋がるんです。
【時短術2】指導書・解答解説を120%使いこなすテクニック
指導書や解答解説、まさか答え合わせのためだけに使っていませんか?それは非常にもったいない!これらは、予習時間を短縮し、授業の質を高めるための「宝の山」なんです。ちょっとした視点の違いで、指導書は最強の時短ツールに変わります。
「解き方」ではなく「解説の仕方」を盗む
指導書を読むとき、「どうやって解くか」ではなく「どうやって解説しているか」という視点で読んでみてください。特に、図やグラフを使った説明、たとえ話、段階的な解説の手順などは、そのまま自分の授業に応用できます。
優れた指導書の解説は、教育のプロが練り上げた「わかりやすい説明のテンプレート」そのものです。自分でゼロから解説を考える必要はありません。
良い解説を真似ることで、準備時間を大幅に短縮しつつ、生徒の理解度を高めることが可能になります。
「別解」や「よくある間違い」をストックする
解答解説を読むときは、模範解答だけでなく「別解」や「注意点」「よくある間違い(誤答例)」といった項目に注目しましょう。これらは授業の幅を広げる絶好のネタになります。
授業中に「この問題、別の解き方もあるんだけど、誰か分かる人いる?」と問いかけたり、「多くの人がここで引っかかるんだけど、なぜだか分かる?」と注意を促したりすることで、生徒の思考を深めることができます。予習の段階でこれらの情報をチェックしておくだけで、授業に深みと面白さが加わります。
【時短術3】授業の「型」を作って準備をパターン化する
毎回、授業の構成をゼロから考えていると、時間がいくらあっても足りません。授業の流れにある程度の「型(テンプレート)」を作ってしまうことで、考える時間を減らし、準備を効率化できます。
自分なりの「勝ちパターン」を見つけましょう。
授業の基本テンプレート
- 導入(5分)
- 要点解説(15分)
- 演習・解説(25分)
- まとめ(5分)
これはあくまで一例です。自分の指導スタイルに合わせて、各パートの時間配分や内容を調整し、「マイテンプレート」を完成させましょう。
一度型ができてしまえば、予習では各パートに何を当てはめるかを考えるだけで済むようになります。
導入の雑談ネタをストックしておく
授業の冒頭5分、いわゆる「アイスブレイク」は生徒の心を掴むために非常に大切です。しかし、毎回面白い雑談を考えるのは大変ですよね。
そこでおすすめなのが、雑談ネタのストックです。学習内容に関連する豆知識(数学者の面白いエピソードなど)、最近のニュース、学校生活に関する質問など、いつでも使えるネタをいくつか用意しておきましょう。
スマホのメモ帳などにリストアップしておくだけで、「今日は何を話そう…」と悩む時間がなくなり、スムーズに授業に入れます。
板書計画は「キーワード」だけメモする
丁寧に板書計画をノートに書いている真面目な先生ほど、予習時間が長くなる傾向があります。板書計画は、一言一句すべて書き出す必要はありません。
「今日の授業で絶対に伝えたいキーワード」や「書いておきたい公式・例文」などを5〜6個、箇条書きでメモしておく程度で十分です。あとは、授業の流れの中で、そのキーワードを使いながら肉付けしていけばいいのです。
これにより、板書計画にかかる時間を1/5以下に削減できます。
【時短術4】スキマ時間をフル活用する「分割予習」のススメ
「まとまった予習時間が取れない」というのは、多くの講師の悩みです。それなら、発想を変えてみませんか?まとまった時間がないなら、短い時間を組み合わせればいいんです。
「分割予習」を習慣にすれば、机に向かう時間はゼロでも、質の高い準備が可能になります。
通勤電車では「解答解説の黙読」
通勤中の電車やバスの中は、絶好の予習時間です。ここでやるべきなのは、担当する範囲の「解答解説を読む」こと。
問題を解く必要はありません。解説を読みながら、「なるほど、ここはこう説明すればいいのか」「この問題はひっかけだな」と頭の中でシミュレーションするだけです。
スマホでテキストのPDFを見ておくだけでも効果は絶大。この10分間のインプットがあるだけで、後で机に向かって本格的に準備する際の時間が劇的に短縮されます。
休憩中の5分で「問題1問だけ解く」
授業の合間の休憩時間や昼休み、たった5分あれば、予習は進められます。この時間でやるのは「今日の授業で一番の山場となる問題を1問だけ解いてみる」ことです。
実際に自分で手を動かして解いてみることで、生徒がどこでつまずきそうか、計算ミスをしそうかといった具体的なポイントが見えてきます。たった1問ですが、この経験が授業での解説の深みを大きく変えます。
「5分で1問」を合言葉に、スキマ時間を有効活用しましょう。
【時短術5】過去の指導記録や教材を「資産」として再利用する
一度行った授業は、決して使い捨てではありません。過去の指導記録や使用した教材は、未来の自分を助けてくれる貴重な「資産」です。
この資産をうまく活用することで、予習の手間を大幅に省くことができます。
資産化できる指導記録
- 授業後のメモ
- 生徒からの質問
- オリジナルプリント
これらの記録を整理・保管しておくことで、来年同じ単元を教える際に、ゼロから準備する必要がなくなります。「去年の自分、ありがとう!」と思える瞬間が必ず来ますよ。
授業後の「3分間メモ」を習慣にする
授業が終わったら、記憶が新しいうちに3分だけ時間を取って、その日の授業についてメモを残す習慣をつけましょう。書く内容は「生徒の反応が良かった説明」「ウケた雑談」「質問が多く出た箇所」「時間配分の反省点」など、何でも構いません。
この小さなメモの蓄積が、翌年以降の予習で絶大な効果を発揮します。テキストの余白に書き込むだけでもOK。
この3分間の投資が、未来の数時間を節約してくれるんです。
自作プリントや教材はデータで保存する
授業で使ったオリジナルの補助プリントや小テストなどは、必ずデータで保存しておきましょう。ファイル名に「【中2英語】不定詞_確認テスト」のように、学年・科目・単元がわかるようにしておくと、後から検索しやすくなります。
クラウドストレージ(Google DriveやDropboxなど)に保存しておけば、いつでもどこでもアクセスできて便利です。一度作った教材は、少し手直しするだけで何度も使えます。
毎回作り直す手間を省き、より質の高い教材へとブラッシュアップしていくことが可能になります。
【科目別】予習の質をさらに高める応用テクニック

基本的な時短術をマスターしたら、次はもう一歩進んで、予習の「質」を高めてみましょう。科目ごとに、押さえるべきポイントは少しずつ異なります。
ここでは、主要科目別に、より効果的な予習を行うための応用テクニックを紹介します。これを実践すれば、あなたの授業はさらに分かりやすく、深みのあるものになるはずです。
数学・算数:解法の暗記ではなく「なぜそうなるか」を言語化する
数学や算数の予習で陥りがちなのが、解法パターンの暗記です。しかし、それでは応用問題に対応できませんし、生徒の「なぜ?」に答えることもできません。
大切なのは、公式や解法の裏にある「理屈」を自分の言葉で説明できるようにしておくことです。
公式の成り立ちを自分の言葉で説明してみる
例えば、「解の公式」を予習する際、ただ公式を覚えて問題を解くだけでなく、「この公式がどのようにして導き出されるのか(平方完成のプロセス)」を一度自分で再現し、説明する練習をしてみましょう。「なぜ2aで割るのか」「なぜルートの中がb²-4acになるのか」を自分の言葉で語れるようになると、生徒への説明に説得力が生まれます。
この「なぜ」を言語化するプロセスが、表面的な理解から本質的な理解へと予習のレベルを引き上げてくれます。
図やグラフをフリーハンドで描く練習をする
関数や図形の問題では、図やグラフを正確に描けるかどうかが理解の鍵を握ります。予習の段階で、テキストに載っている図をただ眺めるだけでなく、一度自分でフリーハンドで描いてみることをおすすめします。
実際に描いてみることで、「補助線はどこに引くのが効果的か」「グラフのどの部分が重要か」といったポイントが体感的に理解できます。授業中に、生徒の前でスラスラと分かりやすい図を描ける先生は、それだけで生徒からの尊敬を集めることができますよ。
英語:文法・単語のつまずきポイントを先回りして押さえる
英語の授業では、生徒がどこでつまずきやすいかを予測し、先回りしてフォローすることが質の高い授業に繋がります。特に、日本語と英語の構造の違いから生じる混乱は、重点的にケアしてあげる必要があります。
英語のつまずきポイント
- 時制の一致
- 関係代名詞
- 前置詞の使い分け
これらの単元は、特に多くの生徒が苦手意識を持つポイントです。予習の際には、「なぜここでつまずくのか」という原因分析まで踏み込んでおくと、より効果的な指導が可能になります。
似ている単語や文法の「違い」を明確にする
例えば、「see」「look」「watch」の違いや、「for」「during」「while」の使い分けなど、似ていて混同しやすい単語や文法項目は、予習の段階でその違いを明確に言語化しておきましょう。「生徒に質問されたら、こう答えよう」というシミュレーションをしておくのです。
コアイメージ(単語が持つ中心的な意味合い)を掴んでおくと、丸暗記ではない、応用力のつく説明ができます。この準備が、生徒の「なるほど!」という納得感を引き出します。
例文を音読してリズムを身体に染み込ませる
テキストに載っている重要例文は、予習の際に必ず声に出して読んでみてください。黙読するだけでは気づかない、英語特有のリズムやイントネーション、単語の繋がり(リエゾン)などを体感することができます。
授業中に、あなたが良い発音とリズムで例文を読んであげれば、生徒も自然とそれを真似するようになり、リスニング力やスピーキング力の向上にも繋がります。予習段階での数回の音読が、授業全体の臨場感を大きく変えるのです。
国語・社会・理科:重要語句と話の「流れ」を掴む
国語、社会、理科といった科目は、知識が点在しがちです。予習の目的は、それらの知識を線で結び、大きな「流れ」や「全体像」として捉えることです。
個々の重要語句を覚えるだけでなく、それらがどのようにつながっているのかを意識しましょう。
登場人物や出来事の相関図を書いてみる
歴史であれば登場人物、古典であれば登場人物、理科であれば物質の変化など、テキストを読みながら簡単な相関図やフローチャートを書いてみるのがおすすめです。例えば、関ヶ原の戦いを予習するなら、徳川家康と石田三成を中心に、誰がどちらの味方で、誰が裏切ったのかを矢印で結んでみる。
こうすることで、複雑な人間関係や出来事の因果関係が視覚的に整理され、記憶に定着しやすくなります。この自作の図は、授業での板書の際にも大いに役立ちます。
「なぜ?」と「その結果どうなった?」を自問自答する
テキストを読んでいるとき、常に「なぜこの出来事が起こったのか?」「その結果、社会はどう変わったのか?」と自問自答する癖をつけましょう。例えば、産業革命を教えるなら、「なぜイギリスで始まったのか?」「産業革命の結果、人々の暮らしはどう変わったのか?」を考えることです。
この「なぜ?」と「結果」のつながりを意識することで、単なる暗記科目から、物語として面白い授業へと進化させることができます。生徒の知的好奇心を刺激する授業の鍵は、この自問自答にあるんです。
どうしても予習時間が取れない時の最終手段とQ&A
どんなに効率化を図っても、急な予定が入ったり、体調が悪かったりと、どうしても予習時間が十分に取れない日はありますよね。そんな絶体絶命のピンチを乗り切るための「最終手段」と、多くの塾講師が抱える予習に関する疑問にお答えします。
これを読んでおけば、いざという時も冷静に対処できるはずです。
最低限これだけ!5分でできる最終チェックリスト
授業開始まであと5分!そんな極限状態で、パニックにならずに最低限の準備を整えるためのチェックリストです。全部やろうとせず、これだけは確認するというポイントを絞りましょう。
5分でできる最終チェック
- 今日の範囲の確認
- 解答に目を通す
- 一番の山場を把握
- 最初の5分の流れ
この4点を確認するだけで、授業の破綻は防げます。まず、教える範囲を間違えないこと。
次に、答えがわからずフリーズする事態を避けること。そして、授業の核となる部分と、導入をどう乗り切るかを決める。
これだけで、精神的な余裕が全く違ってきます。
生徒を巻き込む!「一緒に考える」授業で乗り切る方法
予習不足の時こそ、講師が一方的に教えるスタイルから、生徒と一緒に考える「ファシリテーター」へと役割を変えるチャンスです。この発想の転換が、ピンチを質の高い授業に変えることがあります。
「先生も悩むこの問題、どう解く?」と問いかける
難しい問題に直面した時、知ったかぶりをするのが一番よくありません。正直に「この問題、すごく難しいよね。
先生も一瞬悩んだんだけど、どういうアプローチがいいと思う?」と生徒に問いかけてみましょう。すると、生徒は「先生を助けてあげよう」「自分も考えてみよう」と主体的に問題に取り組み始めます。
複数の意見が出てきたら、それぞれの解法を試してみるのも面白いです。講師が完璧でない姿を見せることで、かえって生徒との距離が縮まることもあります。
ペアワークやグループワークを多めに取り入れる
予習が不十分な時は、自分が話す時間を減らし、生徒が活動する時間を増やすのが得策です。例えば、演習問題をペアで教え合いさせたり、グループで解法を議論させたりする時間を設けましょう。
生徒同士で教え合うことで、理解が深まるという教育的効果も期待できます。その間、講師は机間巡視をしながら生徒の理解度をチェックし、次の解説のポイントを絞り込む時間に充てることができます。
まさに一石二鳥の方法です。
「塾講師の予習」に関するよくある質問
最後に、多くの塾講師から寄せられる予習に関する素朴な疑問に、Q&A形式でお答えします。きっと、あなたの悩みもこの中にあるはずです。
Q1. 担当科目が多すぎて、予習が追いつきません…
A. わかります、その気持ち。複数科目を担当していると本当に大変ですよね。
この場合は、予習に優先順位をつけることが成功の鍵です。例えば、「自分の苦手な科目>生徒の苦手な単元>新しい単元>復習単元」のように、自分の中でルールを決めましょう。
すべての科目を100%の力で予習するのは不可能です。力を入れるべき科目・単元を見極め、それ以外は今回紹介した時短術を駆使して効率的に乗り切る。
このメリハリが大切です。
Q2. 予習した内容を、授業中に忘れてしまいます…
A. これは「あるある」ですよね。しっかり準備したのに、いざ授業が始まると頭が真っ白に…。
これを防ぐには、予習の最後に「キーワードメモ」を作成するのがおすすめです。授業で話す要点や解説のポイントを、付箋や小さなメモ帳に単語レベルで5〜6個書き出しておき、教卓に置いておくだけです。
文章で書くと読むのに時間がかかりますが、キーワードならチラッと見るだけで話す内容を思い出せます。「解の公式の証明」「判別式」「グラフの共有点」といったメモがあるだけで、心の安定剤になりますよ。
Q3. 予習しないベテラン講師がいますが、真似してもいいですか?
A. そのベテラン講師は、一見予習していないように見えて、実は頭の中で瞬時に予習を終えている可能性が高いです。長年の経験の蓄積により、テキストを見た瞬間に「今日のポイントはここだな」「生徒はここでつまずくな」と判断できるのです。
これは新人や若手講師がすぐに真似できるものではありません。彼らの「効率の良さ」は見習うべきですが、形だけ真似て予習を完全にゼロにするのは危険です。
まずはこの記事で紹介した時短術で「賢く予習する」スキルを身につけることから始めましょう。
- 新人講師(1年未満)
- 中堅講師(1〜5年)
- ベテラン講師(5年以上)
当然ですが、経験年数が長くなるほど予習時間は短くなる傾向にあります。これは知識や経験の蓄積だけでなく、予習の「コツ」を掴んでいるからです。
この記事で紹介する時短術は、まさにその「コツ」の部分です。
新人講師は授業時間と同じくらい予習している
新人講師の場合、90分の授業に対して60分〜90分、つまり授業時間とほぼ同じくらいの時間を予習に費やすケースが一般的です。担当する科目や単元が初めてのことばかりなので、これはある意味仕方のないこと。
私も新人時代は、授業の倍以上の時間をかけていました。この時期は「時間をかけてでも、一つ一つの授業を丁寧に準備する」という経験が、将来の大きな財産になります。
焦らず、今は土台作りの時期だと割り切りましょう。
ベテラン講師は平均30分未満で準備を終える
一方、経験5年以上のベテラン講師になると、90分の授業に対する予習時間は平均して30分未満、中には10分程度で終える人もいます。これは決して手を抜いているわけではありません。
長年の経験から「どこが生徒のつまずきポイントか」「どの問題を重点的に解説すべきか」を瞬時に判断できるため、ピンポイントで効率的な予習が可能になるのです。彼らは、これから紹介するような時短術を無意識のうちに実践していると言えます。
多忙な塾講師必見!予習時間を劇的に短縮する5つの時短術

お待たせしました。ここからがこの記事の核心部分です。
毎日忙しい中でも、授業の質を落とさずに予習時間を劇的に短縮するための具体的なテクニックを5つ紹介します。どれも私が実際に試して効果があったものばかり。
一つでもいいので、ぜひ明日からの予習に取り入れてみてください。きっと、驚くほど準備が楽になりますよ。
【時短術1】「教える要点」と「生徒の疑問点予測」に絞り込む
予習時間が長引く最大の原因は「全部を完璧にやろうとする」ことです。まずは、その完璧主義を捨てる勇気を持ちましょう。
予習で見るべきポイントは、実はたったの2つだけ。ここに絞り込むだけで、予習時間は半分以下になります。
予習で絞り込む2つのこと
- 今日の授業のゴール
- 生徒のつまずき予測
この2点さえ押さえれば、授業の根幹は揺らぎません。テキストの隅から隅まで目を通す必要はないんです。
「何を教えるか」と「どこで生徒が迷うか」を明確にすること。これが時短の第一歩です。
授業のゴールを1つだけ決める
予習を始める前に、まず「今日の授業が終わった時、生徒にどんな状態になっていてほしいか」を一つだけ決めてください。例えば、「二次関数の頂点の求め方をマスターしている」「関係代名詞のthatとwhichを使い分けられる」といった具体的なものです。
このゴールが明確になれば、そこから逆算して「何を重点的に解説すべきか」「どの演習問題に時間をかけるべきか」が自然と見えてきます。あれもこれもと欲張らず、ゴールを一つに絞ることが、予習の焦点を定め、無駄をなくすコツです。
生徒が「?」となりそうな箇所を3つ予測する
次に、生徒の立場になってテキストを読み、「ここ、多分わからないだろうな」「この表現は誤解しそうだな」という箇所を3つだけ予測してピックアップします。過去の生徒からの質問を思い出したり、自分が学生時代に苦手だった部分を振り返ったりするのが効果的です。
この「疑問点予測」ができていれば、授業中に生徒が固まってしまっても、先回りして「ここは難しいよね。実はこう考えると分かりやすいよ」とフォローできます。
この準備が、生徒からの「先生、すごい!」という信頼に繋がるんです。
【時短術2】指導書・解答解説を120%使いこなすテクニック
指導書や解答解説、まさか答え合わせのためだけに使っていませんか?それは非常にもったいない!これらは、予習時間を短縮し、授業の質を高めるための「宝の山」なんです。ちょっとした視点の違いで、指導書は最強の時短ツールに変わります。
「解き方」ではなく「解説の仕方」を盗む
指導書を読むとき、「どうやって解くか」ではなく「どうやって解説しているか」という視点で読んでみてください。特に、図やグラフを使った説明、たとえ話、段階的な解説の手順などは、そのまま自分の授業に応用できます。
優れた指導書の解説は、教育のプロが練り上げた「わかりやすい説明のテンプレート」そのものです。自分でゼロから解説を考える必要はありません。
良い解説を真似ることで、準備時間を大幅に短縮しつつ、生徒の理解度を高めることが可能になります。
「別解」や「よくある間違い」をストックする
解答解説を読むときは、模範解答だけでなく「別解」や「注意点」「よくある間違い(誤答例)」といった項目に注目しましょう。これらは授業の幅を広げる絶好のネタになります。
授業中に「この問題、別の解き方もあるんだけど、誰か分かる人いる?」と問いかけたり、「多くの人がここで引っかかるんだけど、なぜだか分かる?」と注意を促したりすることで、生徒の思考を深めることができます。予習の段階でこれらの情報をチェックしておくだけで、授業に深みと面白さが加わります。
【時短術3】授業の「型」を作って準備をパターン化する
毎回、授業の構成をゼロから考えていると、時間がいくらあっても足りません。授業の流れにある程度の「型(テンプレート)」を作ってしまうことで、考える時間を減らし、準備を効率化できます。
自分なりの「勝ちパターン」を見つけましょう。
授業の基本テンプレート
- 導入(5分)
- 要点解説(15分)
- 演習・解説(25分)
- まとめ(5分)
これはあくまで一例です。自分の指導スタイルに合わせて、各パートの時間配分や内容を調整し、「マイテンプレート」を完成させましょう。
一度型ができてしまえば、予習では各パートに何を当てはめるかを考えるだけで済むようになります。
導入の雑談ネタをストックしておく
授業の冒頭5分、いわゆる「アイスブレイク」は生徒の心を掴むために非常に大切です。しかし、毎回面白い雑談を考えるのは大変ですよね。
そこでおすすめなのが、雑談ネタのストックです。学習内容に関連する豆知識(数学者の面白いエピソードなど)、最近のニュース、学校生活に関する質問など、いつでも使えるネタをいくつか用意しておきましょう。
スマホのメモ帳などにリストアップしておくだけで、「今日は何を話そう…」と悩む時間がなくなり、スムーズに授業に入れます。
板書計画は「キーワード」だけメモする
丁寧に板書計画をノートに書いている真面目な先生ほど、予習時間が長くなる傾向があります。板書計画は、一言一句すべて書き出す必要はありません。
「今日の授業で絶対に伝えたいキーワード」や「書いておきたい公式・例文」などを5〜6個、箇条書きでメモしておく程度で十分です。あとは、授業の流れの中で、そのキーワードを使いながら肉付けしていけばいいのです。
これにより、板書計画にかかる時間を1/5以下に削減できます。
【時短術4】スキマ時間をフル活用する「分割予習」のススメ
「まとまった予習時間が取れない」というのは、多くの講師の悩みです。それなら、発想を変えてみませんか?まとまった時間がないなら、短い時間を組み合わせればいいんです。
「分割予習」を習慣にすれば、机に向かう時間はゼロでも、質の高い準備が可能になります。
通勤電車では「解答解説の黙読」
通勤中の電車やバスの中は、絶好の予習時間です。ここでやるべきなのは、担当する範囲の「解答解説を読む」こと。
問題を解く必要はありません。解説を読みながら、「なるほど、ここはこう説明すればいいのか」「この問題はひっかけだな」と頭の中でシミュレーションするだけです。
スマホでテキストのPDFを見ておくだけでも効果は絶大。この10分間のインプットがあるだけで、後で机に向かって本格的に準備する際の時間が劇的に短縮されます。
休憩中の5分で「問題1問だけ解く」
授業の合間の休憩時間や昼休み、たった5分あれば、予習は進められます。この時間でやるのは「今日の授業で一番の山場となる問題を1問だけ解いてみる」ことです。
実際に自分で手を動かして解いてみることで、生徒がどこでつまずきそうか、計算ミスをしそうかといった具体的なポイントが見えてきます。たった1問ですが、この経験が授業での解説の深みを大きく変えます。
「5分で1問」を合言葉に、スキマ時間を有効活用しましょう。
【時短術5】過去の指導記録や教材を「資産」として再利用する
一度行った授業は、決して使い捨てではありません。過去の指導記録や使用した教材は、未来の自分を助けてくれる貴重な「資産」です。
この資産をうまく活用することで、予習の手間を大幅に省くことができます。
資産化できる指導記録
- 授業後のメモ
- 生徒からの質問
- オリジナルプリント
これらの記録を整理・保管しておくことで、来年同じ単元を教える際に、ゼロから準備する必要がなくなります。「去年の自分、ありがとう!」と思える瞬間が必ず来ますよ。
授業後の「3分間メモ」を習慣にする
授業が終わったら、記憶が新しいうちに3分だけ時間を取って、その日の授業についてメモを残す習慣をつけましょう。書く内容は「生徒の反応が良かった説明」「ウケた雑談」「質問が多く出た箇所」「時間配分の反省点」など、何でも構いません。
この小さなメモの蓄積が、翌年以降の予習で絶大な効果を発揮します。テキストの余白に書き込むだけでもOK。
この3分間の投資が、未来の数時間を節約してくれるんです。
自作プリントや教材はデータで保存する
授業で使ったオリジナルの補助プリントや小テストなどは、必ずデータで保存しておきましょう。ファイル名に「【中2英語】不定詞_確認テスト」のように、学年・科目・単元がわかるようにしておくと、後から検索しやすくなります。
クラウドストレージ(Google DriveやDropboxなど)に保存しておけば、いつでもどこでもアクセスできて便利です。一度作った教材は、少し手直しするだけで何度も使えます。
毎回作り直す手間を省き、より質の高い教材へとブラッシュアップしていくことが可能になります。
【科目別】予習の質をさらに高める応用テクニック

基本的な時短術をマスターしたら、次はもう一歩進んで、予習の「質」を高めてみましょう。科目ごとに、押さえるべきポイントは少しずつ異なります。
ここでは、主要科目別に、より効果的な予習を行うための応用テクニックを紹介します。これを実践すれば、あなたの授業はさらに分かりやすく、深みのあるものになるはずです。
数学・算数:解法の暗記ではなく「なぜそうなるか」を言語化する
数学や算数の予習で陥りがちなのが、解法パターンの暗記です。しかし、それでは応用問題に対応できませんし、生徒の「なぜ?」に答えることもできません。
大切なのは、公式や解法の裏にある「理屈」を自分の言葉で説明できるようにしておくことです。
公式の成り立ちを自分の言葉で説明してみる
例えば、「解の公式」を予習する際、ただ公式を覚えて問題を解くだけでなく、「この公式がどのようにして導き出されるのか(平方完成のプロセス)」を一度自分で再現し、説明する練習をしてみましょう。「なぜ2aで割るのか」「なぜルートの中がb²-4acになるのか」を自分の言葉で語れるようになると、生徒への説明に説得力が生まれます。
この「なぜ」を言語化するプロセスが、表面的な理解から本質的な理解へと予習のレベルを引き上げてくれます。
図やグラフをフリーハンドで描く練習をする
関数や図形の問題では、図やグラフを正確に描けるかどうかが理解の鍵を握ります。予習の段階で、テキストに載っている図をただ眺めるだけでなく、一度自分でフリーハンドで描いてみることをおすすめします。
実際に描いてみることで、「補助線はどこに引くのが効果的か」「グラフのどの部分が重要か」といったポイントが体感的に理解できます。授業中に、生徒の前でスラスラと分かりやすい図を描ける先生は、それだけで生徒からの尊敬を集めることができますよ。
英語:文法・単語のつまずきポイントを先回りして押さえる
英語の授業では、生徒がどこでつまずきやすいかを予測し、先回りしてフォローすることが質の高い授業に繋がります。特に、日本語と英語の構造の違いから生じる混乱は、重点的にケアしてあげる必要があります。
英語のつまずきポイント
- 時制の一致
- 関係代名詞
- 前置詞の使い分け
これらの単元は、特に多くの生徒が苦手意識を持つポイントです。予習の際には、「なぜここでつまずくのか」という原因分析まで踏み込んでおくと、より効果的な指導が可能になります。
似ている単語や文法の「違い」を明確にする
例えば、「see」「look」「watch」の違いや、「for」「during」「while」の使い分けなど、似ていて混同しやすい単語や文法項目は、予習の段階でその違いを明確に言語化しておきましょう。「生徒に質問されたら、こう答えよう」というシミュレーションをしておくのです。
コアイメージ(単語が持つ中心的な意味合い)を掴んでおくと、丸暗記ではない、応用力のつく説明ができます。この準備が、生徒の「なるほど!」という納得感を引き出します。
例文を音読してリズムを身体に染み込ませる
テキストに載っている重要例文は、予習の際に必ず声に出して読んでみてください。黙読するだけでは気づかない、英語特有のリズムやイントネーション、単語の繋がり(リエゾン)などを体感することができます。
授業中に、あなたが良い発音とリズムで例文を読んであげれば、生徒も自然とそれを真似するようになり、リスニング力やスピーキング力の向上にも繋がります。予習段階での数回の音読が、授業全体の臨場感を大きく変えるのです。
国語・社会・理科:重要語句と話の「流れ」を掴む
国語、社会、理科といった科目は、知識が点在しがちです。予習の目的は、それらの知識を線で結び、大きな「流れ」や「全体像」として捉えることです。
個々の重要語句を覚えるだけでなく、それらがどのようにつながっているのかを意識しましょう。
登場人物や出来事の相関図を書いてみる
歴史であれば登場人物、古典であれば登場人物、理科であれば物質の変化など、テキストを読みながら簡単な相関図やフローチャートを書いてみるのがおすすめです。例えば、関ヶ原の戦いを予習するなら、徳川家康と石田三成を中心に、誰がどちらの味方で、誰が裏切ったのかを矢印で結んでみる。
こうすることで、複雑な人間関係や出来事の因果関係が視覚的に整理され、記憶に定着しやすくなります。この自作の図は、授業での板書の際にも大いに役立ちます。
「なぜ?」と「その結果どうなった?」を自問自答する
テキストを読んでいるとき、常に「なぜこの出来事が起こったのか?」「その結果、社会はどう変わったのか?」と自問自答する癖をつけましょう。例えば、産業革命を教えるなら、「なぜイギリスで始まったのか?」「産業革命の結果、人々の暮らしはどう変わったのか?」を考えることです。
この「なぜ?」と「結果」のつながりを意識することで、単なる暗記科目から、物語として面白い授業へと進化させることができます。生徒の知的好奇心を刺激する授業の鍵は、この自問自答にあるんです。
どうしても予習時間が取れない時の最終手段とQ&A
どんなに効率化を図っても、急な予定が入ったり、体調が悪かったりと、どうしても予習時間が十分に取れない日はありますよね。そんな絶体絶命のピンチを乗り切るための「最終手段」と、多くの塾講師が抱える予習に関する疑問にお答えします。
これを読んでおけば、いざという時も冷静に対処できるはずです。
最低限これだけ!5分でできる最終チェックリスト
授業開始まであと5分!そんな極限状態で、パニックにならずに最低限の準備を整えるためのチェックリストです。全部やろうとせず、これだけは確認するというポイントを絞りましょう。
5分でできる最終チェック
- 今日の範囲の確認
- 解答に目を通す
- 一番の山場を把握
- 最初の5分の流れ
この4点を確認するだけで、授業の破綻は防げます。まず、教える範囲を間違えないこと。
次に、答えがわからずフリーズする事態を避けること。そして、授業の核となる部分と、導入をどう乗り切るかを決める。
これだけで、精神的な余裕が全く違ってきます。
生徒を巻き込む!「一緒に考える」授業で乗り切る方法
予習不足の時こそ、講師が一方的に教えるスタイルから、生徒と一緒に考える「ファシリテーター」へと役割を変えるチャンスです。この発想の転換が、ピンチを質の高い授業に変えることがあります。
「先生も悩むこの問題、どう解く?」と問いかける
難しい問題に直面した時、知ったかぶりをするのが一番よくありません。正直に「この問題、すごく難しいよね。
先生も一瞬悩んだんだけど、どういうアプローチがいいと思う?」と生徒に問いかけてみましょう。すると、生徒は「先生を助けてあげよう」「自分も考えてみよう」と主体的に問題に取り組み始めます。
複数の意見が出てきたら、それぞれの解法を試してみるのも面白いです。講師が完璧でない姿を見せることで、かえって生徒との距離が縮まることもあります。
ペアワークやグループワークを多めに取り入れる
予習が不十分な時は、自分が話す時間を減らし、生徒が活動する時間を増やすのが得策です。例えば、演習問題をペアで教え合いさせたり、グループで解法を議論させたりする時間を設けましょう。
生徒同士で教え合うことで、理解が深まるという教育的効果も期待できます。その間、講師は机間巡視をしながら生徒の理解度をチェックし、次の解説のポイントを絞り込む時間に充てることができます。
まさに一石二鳥の方法です。
「塾講師の予習」に関するよくある質問
最後に、多くの塾講師から寄せられる予習に関する素朴な疑問に、Q&A形式でお答えします。きっと、あなたの悩みもこの中にあるはずです。
Q1. 担当科目が多すぎて、予習が追いつきません…
A. わかります、その気持ち。複数科目を担当していると本当に大変ですよね。
この場合は、予習に優先順位をつけることが成功の鍵です。例えば、「自分の苦手な科目>生徒の苦手な単元>新しい単元>復習単元」のように、自分の中でルールを決めましょう。
すべての科目を100%の力で予習するのは不可能です。力を入れるべき科目・単元を見極め、それ以外は今回紹介した時短術を駆使して効率的に乗り切る。
このメリハリが大切です。
Q2. 予習した内容を、授業中に忘れてしまいます…
A. これは「あるある」ですよね。しっかり準備したのに、いざ授業が始まると頭が真っ白に…。
これを防ぐには、予習の最後に「キーワードメモ」を作成するのがおすすめです。授業で話す要点や解説のポイントを、付箋や小さなメモ帳に単語レベルで5〜6個書き出しておき、教卓に置いておくだけです。
文章で書くと読むのに時間がかかりますが、キーワードならチラッと見るだけで話す内容を思い出せます。「解の公式の証明」「判別式」「グラフの共有点」といったメモがあるだけで、心の安定剤になりますよ。
Q3. 予習しないベテラン講師がいますが、真似してもいいですか?
A. そのベテラン講師は、一見予習していないように見えて、実は頭の中で瞬時に予習を終えている可能性が高いです。長年の経験の蓄積により、テキストを見た瞬間に「今日のポイントはここだな」「生徒はここでつまずくな」と判断できるのです。
これは新人や若手講師がすぐに真似できるものではありません。彼らの「効率の良さ」は見習うべきですが、形だけ真似て予習を完全にゼロにするのは危険です。
まずはこの記事で紹介した時短術で「賢く予習する」スキルを身につけることから始めましょう。
「塾の授業準備、正直しんどい…」「予習なしで授業を乗り切れたら…」そう思ったこと、ありませんか?実は、塾講師の約7割が「予習時間の確保」に悩んでいるというデータもあるんです。私も新人時代は、毎日深夜まで予習に追われ、心身ともにヘトヘトでした。
でも、予習の「コツ」さえ掴めば、準備時間を半分以下に減らしつつ、授業の質を上げることも可能です。この記事では、私が10年以上かけて編み出した、本当に効果があった「予習の時短術」を包み隠さずお伝えします。
読み終わる頃には「これなら自分にもできるかも」と、心に余裕が生まれているはずです。
塾講師は予習しないとダメ?【結論:ゼロは危険だが工夫次第】

いきなり結論から言うと、塾講師が予習を「ゼロ」にするのは、かなり危険です。たとえ慣れた範囲であっても、思わぬ落とし穴が潜んでいるもの。
でも、だからといって毎日何時間もかけて完璧な予習をする必要も全くありません。大切なのは「予習をしない」ことではなく、「賢く予習する」ことです。
ここでは、予習をしないリスクと、ベテラン講師が実践している「力の抜きどころ」について見ていきましょう。
予習をしないことで起こりうる3つの悲劇
「今日くらい予習しなくても大丈夫だろう」そんな油断が、取り返しのつかない事態を招くことがあります。私も過去に痛い経験をしました。
具体的にどんなリスクがあるのか、3つのポイントに絞って見ていきましょう。
予習不足が招く悲劇
- 生徒からの信頼失墜
- 授業の質の低下
- 自信喪失と精神的疲弊
この3つは連鎖的に起こります。授業の質が下がれば生徒からの信頼を失い、その結果、講師としての自信も失ってしまうという悪循環です。
これを避けるためにも、最低限の予習は不可欠なんです。
生徒からの鋭い質問に答えられない
予習不足の時に一番怖いのが、生徒からの「なんでそうなるの?」という素朴で鋭い質問です。テキストの答えをなぞるだけの授業では、この質問に答えることはできません。
「えーっと…それはね…」と言葉に詰まった瞬間、生徒は敏感に「あ、この先生わかってないな」と察知します。一度失った信頼を取り戻すのは、本当に大変です。
生徒からの信頼は、塾講師にとって最も大切な財産だと言っても過言ではありません。
授業が単調になり生徒が飽きてしまう
予習ができていないと、どうしても指導書やテキストを読むだけの単調な授業になりがちです。雑談や豆知識を交えたり、生徒の興味を引くような問いかけをしたりする余裕が生まれません。
結果として、授業は活気を失い、生徒は退屈してしまいます。「今日の授業、つまらなかったな」と思われてしまうのは、講師として一番避けたい事態ですよね。
生徒の集中力が切れ、私語が増えるなど、授業崩壊のきっかけにもなりかねません。
精神的に追い詰められ仕事が嫌になる
予習不足のまま授業に臨むのは、丸腰で戦場に行くようなものです。「もし難しい質問が来たらどうしよう」「授業が盛り上がらなかったらどうしよう」という不安が常に頭をよぎり、精神的に大きなストレスがかかります。
これが続くと、授業そのものが苦痛になり、最終的には「塾講師の仕事が嫌だ」と感じるようになってしまうことも。自分自身を守るためにも、予習は「安心材料」として最低限行っておくべきなんです。
完璧主義は不要!ベテラン講師が実践する「予習のゴール設定」
予習は大事ですが、完璧を目指す必要はありません。むしろ、完璧主義は予習時間を無駄に長引かせる原因になります。
デキる講師ほど、予習の「ゴール」を明確に設定し、効率的に準備を進めているんです。そのゴールとは一体何でしょうか。
ゴールは「生徒の『わかった!』を引き出す」こと
予習の目的を「自分が100%理解すること」に設定していませんか?実は、これが大きな間違い。本当のゴールは「生徒が授業内容を理解し、『わかった!』と感じてくれること」です。
自分が全てを完璧に暗記していなくても、生徒の疑問に答え、理解を促すポイントさえ押さえていれば、授業は成功します。このゴール設定の違いが、予習時間を大きく左右するんです。
予習を始める前に「今日の授業で、生徒に何を持って帰ってもらうか」を考える癖をつけましょう。
「8割の準備」で最高のパフォーマンスを出す
ベテラン講師は、常に100%の準備を目指しているわけではありません。彼らが意識しているのは「8割の準備」です。
残りの2割は、授業中の生徒の反応や雰囲気を見ながら、その場で柔軟に対応するための「余白」として残しておきます。ガチガチに準備を固めすぎると、アドリブが効かず、生徒の反応に対応できない一方通行の授業になりがちです。
8割の準備で臨み、生徒との対話の中で授業を完成させていく。この感覚が、質の高い授業と予習の効率化を両立させる鍵なんです。
他の講師はどうしてる?予習時間のリアルな実態
自分だけが予習に苦しんでいるんじゃないか…そう不安に思うこともありますよね。でも安心してください。
多くの講師が同じ悩みを抱えています。他の講師がどれくらい予習に時間をかけているのか、リアルな実態を見てみましょう。
講師の経験年数と予習時間
- 新人講師(1年未満)
- 中堅講師(1〜5年)
- ベテラン講師(5年以上)
当然ですが、経験年数が長くなるほど予習時間は短くなる傾向にあります。これは知識や経験の蓄積だけでなく、予習の「コツ」を掴んでいるからです。
この記事で紹介する時短術は、まさにその「コツ」の部分です。
新人講師は授業時間と同じくらい予習している
新人講師の場合、90分の授業に対して60分〜90分、つまり授業時間とほぼ同じくらいの時間を予習に費やすケースが一般的です。担当する科目や単元が初めてのことばかりなので、これはある意味仕方のないこと。
私も新人時代は、授業の倍以上の時間をかけていました。この時期は「時間をかけてでも、一つ一つの授業を丁寧に準備する」という経験が、将来の大きな財産になります。
焦らず、今は土台作りの時期だと割り切りましょう。
ベテラン講師は平均30分未満で準備を終える
一方、経験5年以上のベテラン講師になると、90分の授業に対する予習時間は平均して30分未満、中には10分程度で終える人もいます。これは決して手を抜いているわけではありません。
長年の経験から「どこが生徒のつまずきポイントか」「どの問題を重点的に解説すべきか」を瞬時に判断できるため、ピンポイントで効率的な予習が可能になるのです。彼らは、これから紹介するような時短術を無意識のうちに実践していると言えます。
多忙な塾講師必見!予習時間を劇的に短縮する5つの時短術

お待たせしました。ここからがこの記事の核心部分です。
毎日忙しい中でも、授業の質を落とさずに予習時間を劇的に短縮するための具体的なテクニックを5つ紹介します。どれも私が実際に試して効果があったものばかり。
一つでもいいので、ぜひ明日からの予習に取り入れてみてください。きっと、驚くほど準備が楽になりますよ。
【時短術1】「教える要点」と「生徒の疑問点予測」に絞り込む
予習時間が長引く最大の原因は「全部を完璧にやろうとする」ことです。まずは、その完璧主義を捨てる勇気を持ちましょう。
予習で見るべきポイントは、実はたったの2つだけ。ここに絞り込むだけで、予習時間は半分以下になります。
予習で絞り込む2つのこと
- 今日の授業のゴール
- 生徒のつまずき予測
この2点さえ押さえれば、授業の根幹は揺らぎません。テキストの隅から隅まで目を通す必要はないんです。
「何を教えるか」と「どこで生徒が迷うか」を明確にすること。これが時短の第一歩です。
授業のゴールを1つだけ決める
予習を始める前に、まず「今日の授業が終わった時、生徒にどんな状態になっていてほしいか」を一つだけ決めてください。例えば、「二次関数の頂点の求め方をマスターしている」「関係代名詞のthatとwhichを使い分けられる」といった具体的なものです。
このゴールが明確になれば、そこから逆算して「何を重点的に解説すべきか」「どの演習問題に時間をかけるべきか」が自然と見えてきます。あれもこれもと欲張らず、ゴールを一つに絞ることが、予習の焦点を定め、無駄をなくすコツです。
生徒が「?」となりそうな箇所を3つ予測する
次に、生徒の立場になってテキストを読み、「ここ、多分わからないだろうな」「この表現は誤解しそうだな」という箇所を3つだけ予測してピックアップします。過去の生徒からの質問を思い出したり、自分が学生時代に苦手だった部分を振り返ったりするのが効果的です。
この「疑問点予測」ができていれば、授業中に生徒が固まってしまっても、先回りして「ここは難しいよね。実はこう考えると分かりやすいよ」とフォローできます。
この準備が、生徒からの「先生、すごい!」という信頼に繋がるんです。
【時短術2】指導書・解答解説を120%使いこなすテクニック
指導書や解答解説、まさか答え合わせのためだけに使っていませんか?それは非常にもったいない!これらは、予習時間を短縮し、授業の質を高めるための「宝の山」なんです。ちょっとした視点の違いで、指導書は最強の時短ツールに変わります。
「解き方」ではなく「解説の仕方」を盗む
指導書を読むとき、「どうやって解くか」ではなく「どうやって解説しているか」という視点で読んでみてください。特に、図やグラフを使った説明、たとえ話、段階的な解説の手順などは、そのまま自分の授業に応用できます。
優れた指導書の解説は、教育のプロが練り上げた「わかりやすい説明のテンプレート」そのものです。自分でゼロから解説を考える必要はありません。
良い解説を真似ることで、準備時間を大幅に短縮しつつ、生徒の理解度を高めることが可能になります。
「別解」や「よくある間違い」をストックする
解答解説を読むときは、模範解答だけでなく「別解」や「注意点」「よくある間違い(誤答例)」といった項目に注目しましょう。これらは授業の幅を広げる絶好のネタになります。
授業中に「この問題、別の解き方もあるんだけど、誰か分かる人いる?」と問いかけたり、「多くの人がここで引っかかるんだけど、なぜだか分かる?」と注意を促したりすることで、生徒の思考を深めることができます。予習の段階でこれらの情報をチェックしておくだけで、授業に深みと面白さが加わります。
【時短術3】授業の「型」を作って準備をパターン化する
毎回、授業の構成をゼロから考えていると、時間がいくらあっても足りません。授業の流れにある程度の「型(テンプレート)」を作ってしまうことで、考える時間を減らし、準備を効率化できます。
自分なりの「勝ちパターン」を見つけましょう。
授業の基本テンプレート
- 導入(5分)
- 要点解説(15分)
- 演習・解説(25分)
- まとめ(5分)
これはあくまで一例です。自分の指導スタイルに合わせて、各パートの時間配分や内容を調整し、「マイテンプレート」を完成させましょう。
一度型ができてしまえば、予習では各パートに何を当てはめるかを考えるだけで済むようになります。
導入の雑談ネタをストックしておく
授業の冒頭5分、いわゆる「アイスブレイク」は生徒の心を掴むために非常に大切です。しかし、毎回面白い雑談を考えるのは大変ですよね。
そこでおすすめなのが、雑談ネタのストックです。学習内容に関連する豆知識(数学者の面白いエピソードなど)、最近のニュース、学校生活に関する質問など、いつでも使えるネタをいくつか用意しておきましょう。
スマホのメモ帳などにリストアップしておくだけで、「今日は何を話そう…」と悩む時間がなくなり、スムーズに授業に入れます。
板書計画は「キーワード」だけメモする
丁寧に板書計画をノートに書いている真面目な先生ほど、予習時間が長くなる傾向があります。板書計画は、一言一句すべて書き出す必要はありません。
「今日の授業で絶対に伝えたいキーワード」や「書いておきたい公式・例文」などを5〜6個、箇条書きでメモしておく程度で十分です。あとは、授業の流れの中で、そのキーワードを使いながら肉付けしていけばいいのです。
これにより、板書計画にかかる時間を1/5以下に削減できます。
【時短術4】スキマ時間をフル活用する「分割予習」のススメ
「まとまった予習時間が取れない」というのは、多くの講師の悩みです。それなら、発想を変えてみませんか?まとまった時間がないなら、短い時間を組み合わせればいいんです。
「分割予習」を習慣にすれば、机に向かう時間はゼロでも、質の高い準備が可能になります。
通勤電車では「解答解説の黙読」
通勤中の電車やバスの中は、絶好の予習時間です。ここでやるべきなのは、担当する範囲の「解答解説を読む」こと。
問題を解く必要はありません。解説を読みながら、「なるほど、ここはこう説明すればいいのか」「この問題はひっかけだな」と頭の中でシミュレーションするだけです。
スマホでテキストのPDFを見ておくだけでも効果は絶大。この10分間のインプットがあるだけで、後で机に向かって本格的に準備する際の時間が劇的に短縮されます。
休憩中の5分で「問題1問だけ解く」
授業の合間の休憩時間や昼休み、たった5分あれば、予習は進められます。この時間でやるのは「今日の授業で一番の山場となる問題を1問だけ解いてみる」ことです。
実際に自分で手を動かして解いてみることで、生徒がどこでつまずきそうか、計算ミスをしそうかといった具体的なポイントが見えてきます。たった1問ですが、この経験が授業での解説の深みを大きく変えます。
「5分で1問」を合言葉に、スキマ時間を有効活用しましょう。
【時短術5】過去の指導記録や教材を「資産」として再利用する
一度行った授業は、決して使い捨てではありません。過去の指導記録や使用した教材は、未来の自分を助けてくれる貴重な「資産」です。
この資産をうまく活用することで、予習の手間を大幅に省くことができます。
資産化できる指導記録
- 授業後のメモ
- 生徒からの質問
- オリジナルプリント
これらの記録を整理・保管しておくことで、来年同じ単元を教える際に、ゼロから準備する必要がなくなります。「去年の自分、ありがとう!」と思える瞬間が必ず来ますよ。
授業後の「3分間メモ」を習慣にする
授業が終わったら、記憶が新しいうちに3分だけ時間を取って、その日の授業についてメモを残す習慣をつけましょう。書く内容は「生徒の反応が良かった説明」「ウケた雑談」「質問が多く出た箇所」「時間配分の反省点」など、何でも構いません。
この小さなメモの蓄積が、翌年以降の予習で絶大な効果を発揮します。テキストの余白に書き込むだけでもOK。
この3分間の投資が、未来の数時間を節約してくれるんです。
自作プリントや教材はデータで保存する
授業で使ったオリジナルの補助プリントや小テストなどは、必ずデータで保存しておきましょう。ファイル名に「【中2英語】不定詞_確認テスト」のように、学年・科目・単元がわかるようにしておくと、後から検索しやすくなります。
クラウドストレージ(Google DriveやDropboxなど)に保存しておけば、いつでもどこでもアクセスできて便利です。一度作った教材は、少し手直しするだけで何度も使えます。
毎回作り直す手間を省き、より質の高い教材へとブラッシュアップしていくことが可能になります。
【科目別】予習の質をさらに高める応用テクニック

基本的な時短術をマスターしたら、次はもう一歩進んで、予習の「質」を高めてみましょう。科目ごとに、押さえるべきポイントは少しずつ異なります。
ここでは、主要科目別に、より効果的な予習を行うための応用テクニックを紹介します。これを実践すれば、あなたの授業はさらに分かりやすく、深みのあるものになるはずです。
数学・算数:解法の暗記ではなく「なぜそうなるか」を言語化する
数学や算数の予習で陥りがちなのが、解法パターンの暗記です。しかし、それでは応用問題に対応できませんし、生徒の「なぜ?」に答えることもできません。
大切なのは、公式や解法の裏にある「理屈」を自分の言葉で説明できるようにしておくことです。
公式の成り立ちを自分の言葉で説明してみる
例えば、「解の公式」を予習する際、ただ公式を覚えて問題を解くだけでなく、「この公式がどのようにして導き出されるのか(平方完成のプロセス)」を一度自分で再現し、説明する練習をしてみましょう。「なぜ2aで割るのか」「なぜルートの中がb²-4acになるのか」を自分の言葉で語れるようになると、生徒への説明に説得力が生まれます。
この「なぜ」を言語化するプロセスが、表面的な理解から本質的な理解へと予習のレベルを引き上げてくれます。
図やグラフをフリーハンドで描く練習をする
関数や図形の問題では、図やグラフを正確に描けるかどうかが理解の鍵を握ります。予習の段階で、テキストに載っている図をただ眺めるだけでなく、一度自分でフリーハンドで描いてみることをおすすめします。
実際に描いてみることで、「補助線はどこに引くのが効果的か」「グラフのどの部分が重要か」といったポイントが体感的に理解できます。授業中に、生徒の前でスラスラと分かりやすい図を描ける先生は、それだけで生徒からの尊敬を集めることができますよ。
英語:文法・単語のつまずきポイントを先回りして押さえる
英語の授業では、生徒がどこでつまずきやすいかを予測し、先回りしてフォローすることが質の高い授業に繋がります。特に、日本語と英語の構造の違いから生じる混乱は、重点的にケアしてあげる必要があります。
英語のつまずきポイント
- 時制の一致
- 関係代名詞
- 前置詞の使い分け
これらの単元は、特に多くの生徒が苦手意識を持つポイントです。予習の際には、「なぜここでつまずくのか」という原因分析まで踏み込んでおくと、より効果的な指導が可能になります。
似ている単語や文法の「違い」を明確にする
例えば、「see」「look」「watch」の違いや、「for」「during」「while」の使い分けなど、似ていて混同しやすい単語や文法項目は、予習の段階でその違いを明確に言語化しておきましょう。「生徒に質問されたら、こう答えよう」というシミュレーションをしておくのです。
コアイメージ(単語が持つ中心的な意味合い)を掴んでおくと、丸暗記ではない、応用力のつく説明ができます。この準備が、生徒の「なるほど!」という納得感を引き出します。
例文を音読してリズムを身体に染み込ませる
テキストに載っている重要例文は、予習の際に必ず声に出して読んでみてください。黙読するだけでは気づかない、英語特有のリズムやイントネーション、単語の繋がり(リエゾン)などを体感することができます。
授業中に、あなたが良い発音とリズムで例文を読んであげれば、生徒も自然とそれを真似するようになり、リスニング力やスピーキング力の向上にも繋がります。予習段階での数回の音読が、授業全体の臨場感を大きく変えるのです。
国語・社会・理科:重要語句と話の「流れ」を掴む
国語、社会、理科といった科目は、知識が点在しがちです。予習の目的は、それらの知識を線で結び、大きな「流れ」や「全体像」として捉えることです。
個々の重要語句を覚えるだけでなく、それらがどのようにつながっているのかを意識しましょう。
登場人物や出来事の相関図を書いてみる
歴史であれば登場人物、古典であれば登場人物、理科であれば物質の変化など、テキストを読みながら簡単な相関図やフローチャートを書いてみるのがおすすめです。例えば、関ヶ原の戦いを予習するなら、徳川家康と石田三成を中心に、誰がどちらの味方で、誰が裏切ったのかを矢印で結んでみる。
こうすることで、複雑な人間関係や出来事の因果関係が視覚的に整理され、記憶に定着しやすくなります。この自作の図は、授業での板書の際にも大いに役立ちます。
「なぜ?」と「その結果どうなった?」を自問自答する
テキストを読んでいるとき、常に「なぜこの出来事が起こったのか?」「その結果、社会はどう変わったのか?」と自問自答する癖をつけましょう。例えば、産業革命を教えるなら、「なぜイギリスで始まったのか?」「産業革命の結果、人々の暮らしはどう変わったのか?」を考えることです。
この「なぜ?」と「結果」のつながりを意識することで、単なる暗記科目から、物語として面白い授業へと進化させることができます。生徒の知的好奇心を刺激する授業の鍵は、この自問自答にあるんです。
どうしても予習時間が取れない時の最終手段とQ&A
どんなに効率化を図っても、急な予定が入ったり、体調が悪かったりと、どうしても予習時間が十分に取れない日はありますよね。そんな絶体絶命のピンチを乗り切るための「最終手段」と、多くの塾講師が抱える予習に関する疑問にお答えします。
これを読んでおけば、いざという時も冷静に対処できるはずです。
最低限これだけ!5分でできる最終チェックリスト
授業開始まであと5分!そんな極限状態で、パニックにならずに最低限の準備を整えるためのチェックリストです。全部やろうとせず、これだけは確認するというポイントを絞りましょう。
5分でできる最終チェック
- 今日の範囲の確認
- 解答に目を通す
- 一番の山場を把握
- 最初の5分の流れ
この4点を確認するだけで、授業の破綻は防げます。まず、教える範囲を間違えないこと。
次に、答えがわからずフリーズする事態を避けること。そして、授業の核となる部分と、導入をどう乗り切るかを決める。
これだけで、精神的な余裕が全く違ってきます。
生徒を巻き込む!「一緒に考える」授業で乗り切る方法
予習不足の時こそ、講師が一方的に教えるスタイルから、生徒と一緒に考える「ファシリテーター」へと役割を変えるチャンスです。この発想の転換が、ピンチを質の高い授業に変えることがあります。
「先生も悩むこの問題、どう解く?」と問いかける
難しい問題に直面した時、知ったかぶりをするのが一番よくありません。正直に「この問題、すごく難しいよね。
先生も一瞬悩んだんだけど、どういうアプローチがいいと思う?」と生徒に問いかけてみましょう。すると、生徒は「先生を助けてあげよう」「自分も考えてみよう」と主体的に問題に取り組み始めます。
複数の意見が出てきたら、それぞれの解法を試してみるのも面白いです。講師が完璧でない姿を見せることで、かえって生徒との距離が縮まることもあります。
ペアワークやグループワークを多めに取り入れる
予習が不十分な時は、自分が話す時間を減らし、生徒が活動する時間を増やすのが得策です。例えば、演習問題をペアで教え合いさせたり、グループで解法を議論させたりする時間を設けましょう。
生徒同士で教え合うことで、理解が深まるという教育的効果も期待できます。その間、講師は机間巡視をしながら生徒の理解度をチェックし、次の解説のポイントを絞り込む時間に充てることができます。
まさに一石二鳥の方法です。
「塾講師の予習」に関するよくある質問
最後に、多くの塾講師から寄せられる予習に関する素朴な疑問に、Q&A形式でお答えします。きっと、あなたの悩みもこの中にあるはずです。
Q1. 担当科目が多すぎて、予習が追いつきません…
A. わかります、その気持ち。複数科目を担当していると本当に大変ですよね。
この場合は、予習に優先順位をつけることが成功の鍵です。例えば、「自分の苦手な科目>生徒の苦手な単元>新しい単元>復習単元」のように、自分の中でルールを決めましょう。
すべての科目を100%の力で予習するのは不可能です。力を入れるべき科目・単元を見極め、それ以外は今回紹介した時短術を駆使して効率的に乗り切る。
このメリハリが大切です。
Q2. 予習した内容を、授業中に忘れてしまいます…
A. これは「あるある」ですよね。しっかり準備したのに、いざ授業が始まると頭が真っ白に…。
これを防ぐには、予習の最後に「キーワードメモ」を作成するのがおすすめです。授業で話す要点や解説のポイントを、付箋や小さなメモ帳に単語レベルで5〜6個書き出しておき、教卓に置いておくだけです。
文章で書くと読むのに時間がかかりますが、キーワードならチラッと見るだけで話す内容を思い出せます。「解の公式の証明」「判別式」「グラフの共有点」といったメモがあるだけで、心の安定剤になりますよ。
Q3. 予習しないベテラン講師がいますが、真似してもいいですか?
A. そのベテラン講師は、一見予習していないように見えて、実は頭の中で瞬時に予習を終えている可能性が高いです。長年の経験の蓄積により、テキストを見た瞬間に「今日のポイントはここだな」「生徒はここでつまずくな」と判断できるのです。
これは新人や若手講師がすぐに真似できるものではありません。彼らの「効率の良さ」は見習うべきですが、形だけ真似て予習を完全にゼロにするのは危険です。
まずはこの記事で紹介した時短術で「賢く予習する」スキルを身につけることから始めましょう。

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