塾講師の予習、思った以上に時間がかかって「割に合わないな…」なんて感じていませんか?実は、非効率な予習をしている新人講師の8割以上が「準備に1時間以上」かけています。でも、正しいやり方を知れば、予習時間は半分以下に短縮できるんです。
この記事では、元塾講師の私が実践して予習時間を30分短縮できた、具体的な5つのステップを余すところなくお伝えします。読み終わる頃には「これなら自分にもできる!」と、自信を持って授業準備に取り組めるようになっているはずです。
その予習、非効率かも?塾講師の予習に時間がかかる3つの原因

「よし、今日も予習頑張るぞ!」と意気込んで机に向かったはいいものの、気づけば1時間、2時間…。「あれ、まだ終わらない…」なんて経験、ありませんか?私も塾講師を始めたばかりの頃は、まさにそうでした。
生徒のために完璧な授業をしたいという気持ちが空回りして、時間をかければかけるほど良い授業ができると信じ込んでいたんです。でも、実はそれ、大きな勘違いだったんですよね。
時間をかけているのに授業の質が上がらない、むしろ準備に疲れて授業本番でヘトヘト…なんてことになっているなら、あなたの予習方法は非効率かもしれません。まずは、なぜ予習に時間がかかってしまうのか、その原因を探ることから始めましょう。
原因がわかれば、解決策はすぐそこです。
あなたの予習、時間がかかりすぎていませんか?
新人講師の方にありがちなのが、「予習に時間をかけること」自体が目的になってしまうケースです。もちろん、熱心なのは素晴らしいこと。
でも、塾講師の仕事は授業準備だけではありませんよね。授業本番、生徒からの質問対応、保護者とのコミュニケーションなど、やるべきことはたくさんあります。
予習はあくまで「良い授業をするための手段」です。もし、あなたが1回の授業(例えば90分)のために90分以上の予習時間をかけているなら、それは危険信号。
どこかに非効率な部分が隠れている可能性が高いです。まずは自分の予習時間を一度計測してみて、現状を客観的に把握することから始めてみませんか?
原因1:授業のゴール設定が曖昧
予習に時間がかかる最大の原因、それは「授業のゴールが曖昧なこと」です。今日の授業で、生徒にどうなってほしいのか。
このゴールがフワッとしていると、予習の方向性が定まらず、あれもこれもと手を出してしまいがちです。
ありがちな曖昧ゴール
- 二次関数を理解させる
- 関係代名詞を教える
- この長文を終わらせる
これらは一見ゴールに見えますが、実はただの「やることリスト」に過ぎません。これでは、どこまで深く教えればいいのか、どの問題に時間をかけるべきなのかが分からず、結果的に教材のすべてを網羅しようとして時間がかかってしまうのです。
「何を教えるか」より「何ができるようになるか」
効率的な予習の第一歩は、ゴール設定の視点を変えることです。「何を教えるか(講師目線)」ではなく、「生徒が何ができるようになるか(生徒目線)」で考えてみてください。
例えば、「二次関数を理解させる」ではなく、「二次関数のグラフの頂点を自力で求められるようになる」といった具体的な行動目標を設定します。こうすることで、予習でやるべきことが明確になり、無駄な作業を大幅に減らせますよ。
ゴールが曖昧だと教材のどこに注力すべきか分からない
ゴールが曖昧なまま予習を始めると、テキストの隅から隅まで目を通し、すべての練習問題の解法を確認し…というように、完璧主義の罠に陥りがちです。しかし、授業時間は有限。
すべてを同じ熱量で教えることは不可能です。ゴールが明確であれば、「この目標を達成するためには、この例題とこの練習問題が必須だな」というように、教材に優先順位をつけられるようになります。
これが、予習時間短縮の鍵なんです。
原因2:すべてを完璧に理解しようとしている
真面目な新人講師ほど陥りやすいのが、この「完璧主義の罠」です。生徒からどんな質問が来ても答えられるように、教科書の範囲外の知識まで調べたり、すべての問題の別解をいくつも用意したり…。
その姿勢は本当に素晴らしいですが、残念ながら予習という観点では非効率と言わざるを得ません。
完璧主義の予習例
- 参考書を3冊以上読む
- 全問題の別解を探す
- 関連知識をネット検索
もちろん、深い知識を持つことは講師として大切です。しかし、毎回の予習でこれをやっていると、時間がいくらあっても足りません。
予習の目的は、研究者になることではなく、あくまで決められた時間内で生徒の成績を上げるための授業を設計することです。
教科書を1ページ目から全部読もうとしていませんか?
予習を始めるとき、無意識にテキストを最初のページから順番に読み進めていませんか?実は、これも時間を浪費する原因の一つです。テキストは網羅的に作られていますが、すべての内容が同じ重要度ではありません。
効率的な予習では、まず全体をざっと眺めて授業のゴール達成に必要な部分を見極め、そこから重点的に読み込むというアプローチを取ります。全部を読もうとするのではなく、必要な情報だけを抜き出す感覚が大切です。
100%の理解より、70%の理解+質問への対応力が大事
予習段階で100%完璧に理解している必要はありません。大切なのは、授業の核となる部分を70%〜80%理解し、残りの20%〜30%は「生徒から質問されたら、こう答えよう」あるいは「一緒に考えてみよう」と対応方針を決めておくことです。
講師は万能である必要はありません。むしろ、生徒の疑問に寄り添い、一緒に考える姿勢を見せることの方が、生徒との信頼関係を築く上で効果的だったりするんですよ。
原因3:生徒のつまずきポイントを予測できていない
予習に時間がかかるもう一つの原因は、生徒がどこでつまずき、どんな質問をするかを予測できていないことです。これができていないと、ただ自分の理解を深めるだけの自己満足な予習になってしまい、授業で生徒が「?」という顔をした瞬間にフリーズしてしまう…なんてことになりかねません。
自分にとっては簡単な問題でも、生徒にとっては大きな壁であることはよくあります。このギャップを埋めるための準備ができていないと、授業がスムーズに進まず、結果的に時間内に終わらないという事態を引き起こします。
効率的な予習とは、いわば「授業のリハーサル」。起こりうる問題を事前に予測し、対策を立てておくことが成功の鍵です。
自分ができたから生徒もできる、は大きな間違い
塾講師になるような人は、学生時代に勉強が得意だった方が多いですよね。だからこそ、「なんでこんな簡単なことが分からないんだろう?」と無意識に思ってしまうことがあります。
でも、その考えは一度捨てましょう。自分がすんなり理解できたポイントこそ、多くの生徒がつまずく「地雷原」である可能性が高いのです。
予習の際は、「もし自分が勉強が苦手だったら、どこで疑問に思うだろう?」という視点を持つことが何より大切です。
過去の生徒の質問データが最強の教科書になる
経験の浅い新人講師にとって、つまずきポイントを予測するのは難しいかもしれません。そんな時、最強の武器になるのが「過去のデータ」です。
先輩講師に「この単元で、生徒からよく出る質問って何ですか?」と聞いてみましょう。また、自分が担当した生徒からの質問は、すべてメモしておくことを強くおすすめします。
その質問の蓄積が、あなただけの「つまずきポイントデータベース」となり、今後の予習時間を劇的に短縮してくれる最高の資産になりますよ。
予習時間を30分短縮!元プロが教える効率的な5ステップ勉強法

さて、予習に時間がかかる原因が見えてきたところで、いよいよ具体的な解決策に入っていきましょう。ここからは、私が実際に試行錯誤の末にたどり着いた、予習時間を30分以上短縮できる超効率的な5つのステップをお伝えします。
このステップ通りに進めるだけで、あなたの予習は「時間のかかる苦行」から「戦略的な授業設計」へと変わるはずです。最初は少し戸惑うかもしれませんが、慣れれば驚くほどスムーズに予習が終わるようになりますよ。
この方法は、単に時間を短縮するだけでなく、授業の質そのものを向上させる効果もあります。なぜなら、生徒の視点に立って、授業のゴールから逆算して準備を進める方法だからです。
ぜひ、騙されたと思って一度試してみてください。きっと、その効果に驚くはずです。
ステップ1:授業の「到達目標」を1つに絞る
まず、予習を始める前にやるべき最も大切なこと。それは、その日の授業の「到達目標」をたった1つに絞ることです。
あれもこれもと欲張ってはいけません。「今日の授業が終わった時、生徒が〇〇を自力でできるようになっている」という具体的な状態を、一つだけ設定します。
到達目標設定のポイント
- 目標は1つだけ
- 生徒の行動で設定
- 具体的で測定可能
この最初のステップが、予習全体の羅針盤になります。目標が明確であればあるほど、その後のステップがスムーズに進みます。
逆にここが曖昧だと、結局また非効率な予習に逆戻りしてしまうので、一番時間をかけて真剣に考えてください。
例:「二次方程式の解の公式を使いこなせる」
例えば、数学の「二次方程式」の単元なら、「解の公式を理解させる」という曖昧な目標ではなく、「ax²+bx+c=0の形の二次方程式を見て、解の公式を正しく使い、計算ミスなく答えを導き出せる」というレベルまで具体化します。ここまで具体的にすると、「公式を覚える」「公式に代入する練習」「計算練習」という、授業でやるべきことが自然と見えてきますよね。
これが予習の効率化に繋がるんです。
目標が具体的だと、やるべきことが明確になる
目標を1つに絞ることで、脳は自動的にその目標達成に必要な情報を探し始めます。テキストを開いたときも、「この目標達成に関係あるか?」というフィルターを通して見ることができるので、読むべき場所と読み飛ばしていい場所が瞬時に判断できるようになります。
これは、情報過多の時代を生き抜くための重要なスキルでもあります。予習を通して、情報整理能力も鍛えられるなんて、一石二鳥だと思いませんか?
ステップ2:教材を「教える部分」と「教えない部分」に仕分ける
到達目標が決まったら、次はその目標達成のために教材を仕分けしていきます。ここでのポイントは、「何を教えるか」を決めるのではなく、「何を教えないか」を先に決めることです。
これが時間短縮の大きな鍵となります。
テキストには、発展的な内容や補足的なコラムなど、必ずしも授業の核ではない部分が含まれています。それらをすべて扱おうとすると、時間がいくらあっても足りません。
目標達成に直接関係のない部分は、思い切って「今回は教えない」と決める勇気が必要です。最初は不安かもしれませんが、この「やらないこと」を決める作業が、授業のクオリティを逆に高めることになるんです。
パレートの法則:重要な2割に8割の時間をかける
「パレートの法則」というのを聞いたことがありますか?「結果の8割は、全体の2割の原因が生み出している」という考え方です。これを授業準備に応用します。
つまり、授業の成果(生徒の理解)の8割は、教える内容の重要な2割からもたらされる、と考えるのです。予習の段階で、その「重要な2割」が何かを見極め、そこに予習時間と授業時間の8割を集中投下する。
これが、効率的で成果の出る授業を作る秘訣です。
「教えない」勇気が予習時間を劇的に短縮する
新人講師の頃は特に、「何かを教えなかったら、生徒に申し訳ない」と感じてしまいがちです。わかります、その気持ち。
私もそうでした。でも、考えてみてください。
中途半端にたくさんのことを教えられるのと、一つのことを完璧にマスターできるのと、生徒にとってどちらが嬉しいでしょうか?答えは明白ですよね。「教えない」と決めることは、生徒のためでもあるのです。
このマインドセットを持つことで、予習のプレッシャーが軽くなり、時間も大幅に短縮できますよ。
ステップ3:生徒が質問しそうな箇所を3つ予測する
教える部分を絞り込んだら、次は生徒の視点に立って、授業をシミュレーションします。具体的には、「もし自分が生徒だったら、どこでつまずくだろう?」「どんな質問をするだろう?」と考え、質問されそうな箇所を3つ予測して、その回答を準備しておきます。
質問予測の3つの視点
- なぜ?(理由・背景)
- どうやって?(手順)
- もし〜なら?(例外)
このステップを踏むことで、授業中の予期せぬ質問に慌てることがなくなり、精神的な余裕が生まれます。また、生徒の疑問を先回りして解説に盛り込むことができるため、「先生、分かりやすい!」と評価される授業に繋がります。
たった3つでいいので、ぜひ実践してみてください。
なぜこの公式を使うの?という根本的な疑問
生徒がよくする質問の一つに、「なぜそうなるのか?」という根本的な疑問があります。例えば数学で新しい公式を教えるとき、ただ「はい、これ覚えて」では生徒は納得しません。
「なぜこの公式が成り立つのか」「なぜこの問題でこの公式を使うのか」を簡単な言葉で説明できるように準備しておくと、生徒の理解度が格段に深まります。公式の証明を完璧に解説する必要はありません。
成り立ちのイメージや、使う場面の具体例を用意しておくのがコツです。
計算ミスしやすいポイントの先回り
もう一つ予測しておきたいのが、生徒が間違いやすいポイントです。特に計算問題では、符号のミスや分数の計算など、お決まりの間違いパターンがありますよね。
予習の段階で、「ここは符号ミスしやすいから、注意を促そう」「この分数の計算は、丁寧に途中式を書かせよう」といった対策を考えておきます。授業中に「ほら、やっぱり間違えた!」と指摘するのではなく、「ここはみんなが間違えやすいポイントだから、一緒に確認しようね」と先回りして伝えることで、生徒は安心して問題に取り組むことができます。
ステップ4:解説の流れと時間配分を組み立てる
ここまできたら、予習もいよいよ大詰めです。ステップ1〜3で準備した材料を使って、実際の授業の流れ、つまり「シナリオ」を組み立てていきます。
どの順番で何を話し、どの問題に何分かけるのか、具体的な時間配分まで決めておきましょう。
これをやるのとやらないのとでは、授業の安定感が全く違ってきます。行き当たりばったりの授業は、話が長くなったり、重要な演習時間が足りなくなったりしがちです。
時間配分という「設計図」があることで、講師は安心して授業に臨め、生徒は集中して授業を受けることができるのです。ノートの片隅に、簡単なタイムテーブルを書いておくだけでも効果絶大ですよ。
導入→解説→演習→まとめの黄金比率
授業の構成には、効果的な「型」があります。それが「導入→解説→演習→まとめ」という流れです。
例えば90分の授業なら、「導入(5分)→解説(20分)→演習(50分)→まとめ(15分)」のように、演習に最も多くの時間を割くのが理想的です。講師が一方的に話す「解説」の時間をいかに短く、分かりやすくできるかが腕の見せ所。
予習の段階で、この時間配分を意識して解説内容を練り上げることで、生徒が主役の授業を作ることができます。
時間配分を秒単位で決めると授業がスムーズに
「90分の授業」と大雑把に考えるのではなく、「この問題の解説は3分」「この演習は5分」というように、細かく時間を区切っていくのがおすすめです。もちろん、授業は生き物なので計画通りに進まないこともあります。
でも、目安となる時間配分が決まっていれば、「少し時間が押しているから、次の解説は要点だけにしよう」といった軌道修正がしやすくなります。この時間管理能力は、塾講師にとって非常に重要なスキルの一つなんです。
ステップ5:自分だけの「予習テンプレート」を作成する
最後のステップは、これまでのステップ1〜4を一枚の紙にまとめた「予習テンプレート」を作成することです。毎回ゼロから「さて、何をしようか…」と考えるのは非効率ですよね。
テンプレートがあれば、それに沿って穴埋めしていくだけで、質の高い予習が短時間で完了するようになります。
予習テンプレートの項目例
- 授業の到達目標
- 教えること/教えないこと
- 予測質問と回答3つ
- 時間配分
このテンプレートは、いわばあなたの予習を仕組み化するためのツールです。最初は面倒に感じるかもしれませんが、一度作ってしまえば、今後の予習が驚くほど楽になります。
パソコンでフォーマットを作ってもいいですし、ノートに手書きで枠を作るだけでも十分効果がありますよ。
毎回ゼロから考えないための仕組み作り
仕事ができる人は、例外なく「仕組み化」が得意です。毎回同じ作業を、その場の思いつきでやっていては、クオリティもスピードも安定しません。
予習も同じです。自分なりの「型」を持つことで、思考をショートカットし、本当に頭を使うべき「授業の中身」に集中できるようになります。
このテンプレート作りは、あなたの講師としての生産性を飛躍的に高めるための、最高の自己投資だと考えてください。
テンプレートがあれば10分で予習の骨子が完成
テンプレートに慣れてくると、授業で使う教材に目を通しながら、10分もあれば予習の骨子を埋められるようになります。到達目標を書き、教える範囲に丸をつけ、質問されそうな箇所に印をつけ、大まかな時間配分をメモする。
これだけで予習の8割は完了です。あとは、残りの時間で解説の細かい言い回しを考えたり、板書の練習をしたりと、よりクリエイティブな準備に時間を使えるようになります。
この状態を目指しましょう。
【科目・指導形態別】さらに差がつく予習のやり方とポイント

ここまでは、すべての科目や指導形態に共通する予習の基本的な考え方とステップについてお伝えしてきました。これだけでも予習時間は大幅に短縮できるはずです。
しかし、さらに一歩進んだプロフェッショナルを目指すなら、科目や指導形態ごとの特性に合わせた予習のポイントを押さえておくと、より質の高い授業ができるようになります。
数学と国語では当然、予習で注目すべきポイントは異なりますし、1対1の個別指導と30人の集団指導では、準備すべきことも変わってきます。ここでは、あなたの授業をさらにレベルアップさせるための、応用的な予習のコツを伝授します。
自分の担当科目や指導形態に合わせて、使えそうなものから取り入れてみてください。
主要科目別!予習で押さえるべき核心
まずは、主要科目である「数学」「英語」「国語」について、予習で特に重点を置くべきポイントを見ていきましょう。それぞれの科目の本質を理解することで、予習の精度が格段に上がりますよ。
科目別予習の核心
- 数学:解法の再現性
- 英語:構造の可視化
- 国語:思考の言語化
これらの核心を意識するだけで、予習の時にどこに注目すれば良いかが明確になります。ただ問題を解けるようにするだけでなく、その科目の「考え方」そのものを教えるための準備、それがプロの予習です。
数学:解法のパターンと別解の準備
数学の予習で最も大切なのは、その問題の解法を「他の問題にも応用できるパターン」として生徒に提示できるか、という点です。ただ解き方を教えるだけでは、少し問題の形式が変わっただけで生徒は手も足も出なくなってしまいます。
「このタイプの問題が出てきたら、まず〇〇を試す」というような、汎用性の高い思考プロセスを伝えられるように準備しましょう。また、余裕があれば別解を1つ準備しておくと、生徒の多様な考え方に対応でき、授業に深みが出ます。
英語:文法構造の解説と単語の派生語
英語の予習では、特に長文読解において、文章の構造(SVOCなど)をいかに分かりやすく図解できるかが鍵となります。複雑な一文を、シンプルな骨格に分解して見せる準備をしておきましょう。
また、単語を教える際には、その単語一つだけでなく、関連する派生語(例えば、”success”を教えるなら”succeed”や”successful”も一緒に)や、語源をセットで伝えられると、生徒の語彙力が飛躍的に伸びます。予習の段階で、そうしたプラスアルファの情報をメモしておくのがおすすめです。
国語:本文の要約と設問の意図
国語、特に現代文の予習では、まず自分自身が本文の内容を200字程度で要約できるかを確認します。これができないと、生徒に的確な読解指導はできません。
その上で、各設問が「筆者のどの主張を、どのように問うているのか」という「設問の意図」を分析します。選択肢問題であれば、なぜ他の選択肢が間違いなのかを明確に説明できる準備が必要です。
「なんとなく」で答えを教えるのではなく、論理的な根拠を持って解説できるようにしておくことが、国語指導の要です。
個別指導と集団指導で予習のやり方はどう違う?
指導する生徒の人数によっても、予習のやり方は大きく変わってきます。個別指導のきめ細やかさと、集団指導のダイナミズム。
それぞれのメリットを最大限に活かすためには、予習の段階から戦略を変える必要があります。
あなたの指導形態はどちらですか? もしかしたら両方を担当しているかもしれませんね。それぞれの予習のポイントを理解し、頭を切り替えられるようになると、どんな状況でも質の高い授業を提供できる、市場価値の高い講師になれますよ。
個別指導:生徒一人ひとりの進捗に合わせた予習
個別指導の予習で最も重要なのは、「その生徒」に徹底的にフォーカスすることです。前回の授業でどこまで理解できて、どこに課題が残ったのか。
宿題の達成度はどうだったか。これらの情報を元に、今日の授業でクリアすべき課題を具体的に設定します。
テキストの進度よりも、生徒の理解度を優先した「オーダーメイドの予習」が求められます。生徒のノートや過去の答案を見返し、その子のミスの傾向を分析しておくといった、パーソナルな準備が効果を発揮します。
集団指導:全体のレベル感と時間配分を重視した予習
一方、集団指導では、クラス全体の平均的な理解度を想定した予習が必要です。全員が満足する授業は難しいですが、少なくとも8割の生徒が「分かった」と感じられるような授業設計を目指します。
そのためには、厳密な時間配分が不可欠です。また、生徒を飽きさせないための発問や、理解度を確認するための小テストなど、授業を盛り上げるための「仕掛け」を予習の段階で複数用意しておくことが成功の鍵。
全体の流れをコントロールする、いわば「演出家」としての視点が求められます。
オンライン指導で効果を最大化する予習のコツ
近年、急速に普及したオンライン指導。対面とは異なる環境だからこそ、予習のやり方にも工夫が必要です。
生徒の反応が分かりにくい、集中力が続きにくいといったオンライン特有の課題を、予習の力で乗り越えましょう。
オンライン予習のコツ
- 視覚的な資料準備
- 発問のバリエーション
- 指示の明確化
これらのポイントを意識するだけで、オンライン授業の質は劇的に向上します。画面越しのコミュニケーションを円滑にするための準備が、生徒の満足度に直結することを覚えておいてください。
画面共有を前提とした資料準備
オンライン指導の最大の武器は「画面共有」です。この機能を最大限に活かすための準備が欠かせません。
例えば、テキストをただ映すだけでなく、重要なポイントを赤枠で囲んだり、解説を書き込んだりしたPDFを事前に用意しておくと、生徒は何に注目すれば良いか一目で分かります。また、図形問題などは、アニメーションを使って解説するスライドを作成するのも非常に効果的です。
少し手間はかかりますが、生徒の理解度は格段に上がりますよ。
生徒の反応が見えにくい分、発問を多めに用意する
オンラインでは、生徒の表情や手元の様子が見えにくいため、理解度を把握するのが難しいですよね。だからこそ、対面授業以上に「発問」が重要になります。
「ここまでで何か質問ある?」といった漠然とした問いかけではなく、「じゃあ、この公式の『a』にはどの数字が入るかな?」といった、YES/NOや短い単語で答えられる具体的な質問を多めに用意しておきましょう。これにより、生徒の集中力を維持し、理解度をこまめにチェックすることができます。
塾講師の予習あるある!よくある悩みと解決策Q&A
ここまで効率的な予習方法について詳しくお伝えしてきましたが、それでも現場では予期せぬ悩みやトラブルが発生するものです。私も新人時代は、「こんな時、どうすればいいの!?」とパニックになった経験が何度もあります。
ここでは、多くの新人塾講師が抱えがちな「予習あるある」な悩みについて、私の経験に基づいた具体的な解決策をQ&A形式でお答えしていきます。きっと、あなたの悩みに近いものが見つかるはずです。
一人で悩まず、先人の知恵をうまく活用してください。これらの解決策を知っておくだけで、いざという時に冷静に対応できるようになりますよ。
Q1. 当日まで教える範囲がわからない場合はどうすればいい?
個別指導塾などでよくあるのが、生徒が学校の宿題を持ってきたり、前回の授業範囲が思ったより進まなかったりして、当日まで教える範囲が確定しないケース。これは本当に焦りますよね。
完璧に準備できないことに不安を感じる気持ち、すごくわかります。
でも、安心してください。こういう状況を乗り切るための効果的な対策があります。
それは、「完璧な準備」を目指すのではなく、「柔軟に対応できる準備」をしておくという発想の転換です。具体的には、いくつかの「引き出し」を事前に用意しておくことが鍵になります。
汎用性の高い「基本問題」のストックを用意しておく
担当している学年や科目で、頻出する単元や、多くの生徒がつまずきやすい基本問題ってありますよね。例えば、中1数学なら「方程式の文章題」、中2英語なら「不定詞の3用法」など。
これらの単元の基本問題を解説付きでいくつかストックしておきましょう。もし当日の範囲の準備が不十分でも、「じゃあ、今日はすごく大事な復習をしよう!」と言って、そのストック問題を使えば、質の高い授業ができます。
これは生徒にとっても有益な時間になります。
生徒のテキストを写真で送ってもらう仕組みを作る
より根本的な解決策として、塾のルールとして可能であれば、生徒に授業で扱ってほしい範囲を事前に写真で撮って送ってもらう仕組みを作るのがおすすめです。これなら、少なくとも前日には教える範囲が確定します。
保護者の方に協力をお願いしたり、生徒自身に習慣づけてもらったりする必要がありますが、これができれば予習の計画が格段に立てやすくなります。教室長や先輩に相談して、導入できないか検討してみる価値は十分にありますよ。
Q2. 予習したのに生徒の質問に答えられなかったらどうしよう?
これは、講師なら誰もが一度は経験するであろう、冷や汗もののシチュエーションですよね。「先生なのに答えられないなんて、信頼を失ってしまう…」と不安になる気持ち、痛いほどわかります。
私も初めて答えられなかった日は、帰り道で本気で落ち込みました。
答えられない時のNG対応
- 知ったかぶりをする
- 話をそらす
- 質問を無視する
これらの対応は、生徒からの信頼を一瞬で失います。では、どうすればいいのか?実は、このピンチは生徒との信頼関係をより深めるチャンスに変えることができるんです。
大切なのは、誠実な姿勢を見せることです。
「良い質問だね!一緒に考えてみよう」でOK
生徒から想定外の質問が来た時、最強のフレーズがこれです。「すごく良い質問だね!先生もすぐには答えられないから、一緒に考えてみようか」。
この一言で、生徒の質問を肯定し、知ったかぶりをしない誠実な姿勢を示すことができます。そして、生徒と一緒に教科書や参考書で調べたり、考えたりする時間を作るのです。
この共同作業を通して、生徒は「先生も完璧じゃないんだ」「一緒に学ぶ仲間なんだ」と感じ、より一層あなたを信頼してくれるようになります。
完璧な講師より、一緒に学ぶ姿勢が信頼を生む
生徒は、講師に完璧な知識を求めているわけではありません。それよりも、自分の疑問に真摯に向き合ってくれる姿勢を求めています。
答えられなかったことは、決して恥ずかしいことではないんです。「来週までに調べて、もっと分かりやすく説明できるようにしてくるね!」と約束すれば、あなたの熱意は必ず生徒に伝わります。
失敗を恐れず、生徒と共に成長していく。そんな講師の方が、人間的な魅力にあふれていると思いませんか?
Q3. 予習が時給に含まれず「ブラック」だと感じる…
塾講師の仕事で、多くの人が直面する現実的な問題がこれですよね。授業時間に対してしか給与が支払われず、予習や報告書作成などの時間はサービス残業状態…。
「これってブラックじゃない?」と感じてしまうのも無理はありません。
この問題に対する考え方は二つあります。一つは労働環境としての問題、もう一つは自分自身のマインドセットの問題です。
労働条件については塾の方針なので個人で変えるのは難しいかもしれませんが、自分の捉え方を変えることは今すぐにでもできます。そして、そのマインドセットの転換が、結果的にあなたの市場価値を高めることに繋がるんです。
予習は自己投資と捉えるマインドセット
まず試してほしいのが、「予習は給料の出ない労働」ではなく、「自分のスキルを高めるための自己投資」と捉え直すことです。効率的な予習方法を身につけることは、授業の質を高めるだけでなく、あなたの時間管理能力や問題解決能力を鍛えるトレーニングにもなります。
このスキルは、将来どんな仕事に就くにしても必ず役立ちます。目先の時給だけでなく、予習を通して得られる長期的なスキルアップというリターンに目を向けてみませんか?
効率化して「時給換算」を上げていく発想
もう一つの考え方は、予習時間を徹底的に効率化して、実質的な「時給」を上げていくという発想です。例えば、授業の時給が1500円で、予習に1時間かかっていたら、実質時給は750円です。
しかし、この記事で紹介した方法を実践して予習時間が30分になれば、実質時給は1000円に上がります。さらに15分で終えられるようになれば、実質時給は1200円です。
このように、自分の工夫次第で仕事の価値を高めていくゲームだと考えると、予習の効率化にもっと意欲的に取り組めるようになりますよ。

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