みなさんは教師の「ワーキングプア」という言葉をご存じでしょうか?
働いているのに、まったく豊かにならない「働いたら負け?」という人が増えています。かつて、北欧のまじめな人たちがその被害にあっていましたね。
行き過ぎた福祉を求めると、働く人の負担が増え不満は増します。
現在、日本の福祉負担は、一人当たり45%ですが、ヨーロッパは50~60%です。
北欧は働く人の負担はわずか10%で残り50%を国民全員が負担します。その代わり病院と教育を無償にしています。
一方、日本では、20%を働く人が、残りの25%を国民全員が負担します。そう、消費税です。
働く人がそれなりに裕福な場合は、それでも納得できる負担です。しかし、皆さんがそうなのでしょうか?
今回は教師の中でも悲惨な待遇で働いている非常勤講師のワープア問題を取り上げます。
知られざる非常勤講師の雇用問題
バブル崩壊後、日本では貧富の差が開いています。
その中で非正規雇用問題が起こり、「非正規雇用者」でも本人が望めば「正規雇用」または「社会保険の加入」が認められるようになりました。
ところが、ここで例外が起こったのです。
その一つが「非常勤講師」です。
田アシカに講師には複数の種類があり、中には1時間数万円を超える時給を受け取る人もいます。
いわゆる「人気の予備校教師」や「大学の名誉教授」などです。
教員だけでなくそれは医学の世界も同じで、年収が400万円以下の医師もいれば、時給数十万円の医師もいます。
ただ、教員の非正規雇用はこの問題の時に「例外」の一つとなってしまいました。
一般的な仕事と非常勤講師の違い
一般的なパート社員は出勤し「タイムカード」を打刻し、退勤する時に再度「タイムカード」に入力されます。
近年は、社員証のバーコードや、自身が持たされているアプリなどで管理されるようにもなっています。そこで、明確に「9時出勤17時半退勤、昼休み1時間」など仕事をした時間がわかるようになっています。
ところが未だ教員の世界は、出勤簿への捺印で「何時に出勤しているか何時に退勤しているか」が明確ではないのです。
非正規雇用問題の時に、遅くまで仕事をしているのは「能力が低い」からという意見がありましたが、教員の場合は一概に言えず、ほとんどが1.2~2倍の「サービス残業」を余儀なくされています。
そこで、正規の教員にはゆとりをもって授業時間が設けられ、それ以外の業務を空いた時間にこなすようになっています。
さらに私学のほとんどは専任教員には「残業手当」を支払ったり、給与が高額に設定されています。部活を持っても、週に2日のお休みがとれるようにもなっています。
ところが、同じ教員でも非常勤講師は、働いた授業時間分しか支払いがありません。
非常勤講師の待遇は学校によって大違い
非常勤講師の中で、もっとも「最悪」な待遇の学校では授業を行った時間分のみ支払いをします。
例えば、5月のGWや夏休み、期末試験、文化祭などで授業がないと「無給」になります。
一般的なアルバイトやパートの人から見えれば「当たり前」のように見えます。
しかし、その分非常勤講師でも専任同様に「テストの採点」「授業準備」「成績処理」「生徒からの質問応答」など仕事をしています。
芸術や家庭科、情報科のように専任教員がいない教科は「資産管理」「予算策定」や「教科書選定」まで非常勤講師の仕事です。
そして、その仕事分は「無給」です。
一般的なパートやアルバイトの場合は休日の仕事の場合は通常の支払い額の1.5倍から2倍です。
ただ、非常勤講師は無給での仕事を暗黙の了解で作業として組み込まれている学校があります。
- 成績処理の提出期限あるのに事務作業のタイムカードがない
- 年度カリキュラム作成・年間予算の作成の仕事が降られるが記録されない
- テスト作成義務があるのに、事務給を記録する場所がない
- 学園祭や学校行事出席が推奨されているが記録する場所がない
どう考えても提出するものに関して、制作時間がかかるものであるのにも関わらず、それを記録する場所が存在しない学校がいくつもあります。
こういった学校は良い先生が集まりにくく、良い先生でもすぐに辞めてしまって、学校側は次の教員を毎年探す、だから授業も良いものにならない、といった悪循環を続けています。
逆に人気の私学では「授業コマ」「事務作業」を年間を通して計算し、こういった作業を含め、月額支給をしています。
実技教科の場合は期末試験のほかに、実技テストや提出物、教室管理があるため、こういった手当を支給、時間外の仕事分もタイムカード制にしてきちんと管理し、支払っている学校もあります。
なかには、専任教員がいない教科もありそこではほぼ専任と同等の扱いです。
- 「月額の固定給」
- 「社会保険の加入」
- 「ボーナスの支給」
- 「時間外、実習手当や管理手当」
等を専任の代わりの分をしっかりと認め保証しています。
こういった学校には本当に優秀な先生が集まってきます。
非常勤講師の年収では老後にワープアに陥りやすい
私学教員の年収は、都内職業別ランキングで常にベスト10に入ります。40代、50代で1000万円を超える人もいます。
しかし、非常勤講師は違います。
学校によって100万円以下、良い学校でも300万円前後です。
この違いから非常勤講師で生計を立てている男性教員の中には、妻子がいても低所得者に認定されている人もいます。
年収が300万円を下回ってしまうのです。コマ数が少なく1校では100万円を下回るため、2校、3校と掛け持ちをしている講師もいます。
「私学」の教員なのに、お金持ちの子供がいるはずの学校なのに・・・です。
学校によっては、本当に高額所得者の子供ばかりで目が肥えているため、自分の服装にも気を使います。
公立以上に親は学校に目を光らせているため、授業準備や成績処理などに万全の力を入れています。
でも年収300万円以下での仕事です。
これででスキなく、仕事をすることができると思いますか?
接客業だって「御仕度代」を支払うお店もあります。
そのため、夜は予備校や塾講師、休みの日は公開模試などの試験監督、と休みなく働いている人もいます。
副業を許可する会社も増えました。趣味を生かした副業は仕事へのフィードバックにもなるということです。
ただ現実は厳しく、複数校を掛け持ちして何とか生活ギリギリを保っている教師が多いのです。
さらに、100万円の学校を3校掛け持ちしても、それぞれの学校での時間数が不足するため「社会保険の加入」が認められません。
寝ず、休まずに働いても、年齢が来れば退職金失業保険なしの退職です。1円も支払っていない専業主婦と同じ、年金しか支給されません。
まさに老後に「ワーキングプア」です。中には、大学院や博士課程まで卒業した人もいます。
学校にかけてきた奨学金の支払いのために、長期休みはイベントのバイトやプールやスキー場の監視員、塾の夏期講習などのバイトをしている人もいます。
非常勤講師の生活苦と責任の重さについて
以前、奨学金の返済、低所得、家族からの軋轢に堪え切れず、「自殺」という悲しい結末を終えた非常勤講師がいました。
同じ授業を行って、かたや年収が1000万円から数千万円、「非常勤講師」というだけで1/5~1/3なのです。
30代、40代の講師の中には就職氷河期で非常勤講師という道を選び、そのままになっている人も大勢います。
一般の正社員になれば年収400万円以上、専任教員になれば500万円を超えます。
資格職の「教員」なのに、正職員と同じような授業を行っているのに、フリーターとほぼ同じ年収で「教員」としての責任を負わされるのです。
独身の場合でも、正規雇用の教員には「住宅手当」が支給されます。
しかし、非常勤講師には支払われません。通勤費も全額支給されない学校もあります。
他の仕事をして生活レベルを上げたくても、企業の中には「教員」を採用したがらないところもあります。
すると、副業をしたくても「教員」という仕事や塾講師などの仕事に限られてしまう人もいます。
毎日掛け持ちの仕事をしても月収は20万程度
実際に非常勤講師は1つの学校のフルタイムで入れることが少ないです。専任の空き時間を補う形で採用されるからです。
例えば週に3回働く場合の給料をみてみると・・
- 月曜日に3コマ
- 水曜日に4コマ
- 木曜日で4コマ
- 計11コマで毎日実質の仕事時間は毎日6~8時間
- 実技を入れてい月に96時間仕事しても月額制で11万円前後
これが現実です。
社会保険にも入れず、他の仕事もできず、年収は132万円ということになります。
他の学校と掛け持ちして月曜から金曜まで毎日6~8時間働いても、月額19万円、年収216万円です。
非常勤講師は社会保険も自腹
一般の契約社員の人の中には「良いほう」と思うかもしれませんが、一般企業ならここで社会保険などに加入できますので、非消費支出(税金・社会保険料)合わせて3万円前後引かれて手取りは16万円になります。
これが非常勤講師では、全額自分で支払うため、6万円を支払うことになり手取りは13万円です。
失業しても「雇用保険」の支給もありません。
これが非常勤講師です。社会保険に入ることができれば手取りは192万円ですが、入れない非常勤講師は166万円になります。
これをさらに何年も、何十年も続けている人も大勢います。
専任なら10年で5000万円になるところを、非常勤講師では保証もなく1600万円にしかなりません。
さらに、ある程度の年収があるため、生活保護や年金免除の対象にはなりません。
奨学金の返済で借金を抱えている教師も多い
また、教員になるためには「大学」を卒業することが必須となるため奨学金を借りている人もいます。
奨学金の返済をし、学生納付特例制度を利用したことによる「年金」の支払いもすると、毎月10万円を切ってしまう人もいます。
この金額で専任と同じ「責任」を負わせること自体が問題です。まさに、ワーキングプアです。
まとめ
大学生の中で「教員免許」をとる人が減少しています。
教員免許を取るためには、大学の学費以外にもお金を支払います。
奨学金を借りて、返すことができない非常勤講師になるよりも一般企業で働くための企業で働くことが、良いと考える人が増えています。
北欧では「教員免許」がとれる大学は授業料が無償です。自分で支払うお金が必要なのに、採用の半分近くが収入の少ない「非常勤講師」で賄っている日本では、良い先生が育つはずがないのです。
良い先生を確保するためには、県の教育委員会や学校が非常勤講師の貧困とワーキングプアの問題に前向きに取り組むことが、最も大切な時代かもしれません。
気軽にどうぞ♪